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「ミニバブル」崩壊鮮明、基準地価が前年比大幅減

「資産デフレ」懸念再び

大阪圏の優良商業地ながら地価下落が広がった御堂筋周辺(大阪市中央区で、本社ヘリから)=上田尚紀撮影

 2009年の基準地価の下落率は前年から大幅に拡大し、「ミニバブル」といわれた07年からの地価下落傾向が鮮明になった。昨秋のリーマン・ショックで、外資系ファンドなどが不動産投資から一斉に引き揚げたことに加え、その後の景気悪化で住宅購入を控える家庭が増えるなど需要の冷え込みが響く。資産価格下落が物価下落につながる「資産デフレ」の懸念が再び強まってきた。

(辻本貴啓、栗原健)

 大阪圏の商業地は全地点で下落し、平均下落率は7・1%だった。特に大阪市の中心6区は平均で13・3%下落と、前年の7・5%の上昇から一転して大幅に落ち込んだ。住宅地も全地点で下落し、平均で前回の1・0%上昇から4・5%の下落に転じた。

 大阪圏の商業地で下落率トップだった「御堂筋センタービル」(大阪市中央区)、地価首位の「大阪第一生命ビルディング」(大阪市北区)は、いずれも都心の「一等地」にある。それが今回の調査では、いずれも大幅な下落に転じた。

 下落が目立つのはブランド力の高い地域だ。住宅地も東京の田園調布、神戸の岡本など高級住宅地が目に付く。「一等地を物色していた規模の大きな投資家や富裕層がなりを潜めた」(不動産鑑定士)という。

 不動産大手の幹部は「最近は同業者や銀行の不動産担当者と会っても、欲しい物件のリストを出し合うだけで、売買の話に全くならない」とこぼす。

 これは高値で仕入れた不動産を安く売り払うのではなく、相場の上昇を待つ動きが強まっているからだ。

 08年秋に大阪・心斎橋の商業ビルを取得したドイツの不動産投資会社DEGIで国際調査部門を担当するトーマス・ベイエル氏は「日本では過去10年間の土地取引の4割が、地価の高い06〜07年に行われた」と、その背景を指摘する。

 一方、国交省は公示地価(1月1日時点)との比較で「今年に入り、景気持ち直しへの期待、在庫・価格調整の進展などを背景に下落幅が縮小した地点がみられた」と指摘している。

 確かに、東京圏では公示地価との比較で09年後半に下落率が縮小した地点が、商業地、住宅地とも60%台を占める。値頃感のある不動産に買い手が付くケースも出てきた。しかし、大阪圏では下落率が同じか拡大という地点が商業地、住宅地とも80%近くにのぼる。

 大阪圏でも、春頃から投資の動きが一部に出てきたほか、住宅ローン減税拡充など景気対策の効果もあってマンションのモデルルーム来場者数も増えていた。

 ところが、そうした動きは7月頃には息切れした。

 商業地の先行きについて、大阪都心では「合理化策としてのオフィスの移転・縮小の動きは一巡した」(京阪神不動産の村田正隆常務)との指摘がある。

 ただ、不動産サービス会社ジョーンズラングラサール(東京)によると、JR大阪駅北側の「梅田北ヤード」完成などで、大阪市内で12年に新たに供給されるオフィスビルの床面積は、09年の約3倍、28万平方メートルに増え、再び供給過剰に陥る懸念がある。

 不動産市況に「底入れの兆しが見え始めた」との見方はあるものの、依然力強さには欠けている。

上昇は全国3地点のみ

 地価が前年から上昇したのは全国で3地点だけ。このうち上昇率トップは静岡市駿河区のJR東静岡駅周辺地区(商業地)の3・6%だった。この地域は「市街地の中心部ながら、広くまとまった土地が確保できる地域」(静岡市東静岡駅周辺整備課)で、1998年10月に新駅が開業した。最近は28階建てのマンションなど高層ビルの建設が進んでいる。地価の上昇は「新たに民間の商業施設建設の予定が進んでいるため」(不動産鑑定士)とみられる。ただ、上昇率は小幅で、地元では「地価が上がっているという実感はあまりない」といった意見が多い。

2009年9月18日  読売新聞)

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