奈津子の徒然雑記帳

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ギリシア神話の神々100

<ヘルマプロディトス・麗しきアンドロギュノス>

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 古代より、芸術作品中にしばしばその姿を表す、豊かな乳房を持ったなよやかな美青年、もしくは男根を具えた美女。
両性具有者の代名詞的存在であるその神は、名をヘルマプロディトスと云います。

 父は男性美の典型である男神ヘルメス、母は女性美の極致である女神アプロディテ。
彼の名前は、この父母の名を合体させただけの非常に安直なものですが、同時に彼自身の身体のあり方を示す意味深い名前でもあるのです。
男女両性を兼備するという彼の身体的特徴は、しかし生まれつきのものではありませんでした。
もともとは、普通の男の子で、両親の麗質を受け継いだ輝くばかりの美少年だったのです。
イダ山の洞窟で母親代わりのニンフ達に可愛がられ、それはそれは健やかに成長しました。

 15歳を迎えた或る日の事、少年らしい冒険心から故郷を離れ、当てのない旅に出た事からヘルマプロディトスの人生は変わります。
初めて見る国々、初めて見る風景に心躍らせながら遠くカリアの地に迄辿り着いた彼は、そこで滾々と湧き出る大層きれいな泉を見つけました。
それは水の精(ナイアス)の1人サルマキスが支配する泉でした。

 サルマキスは、仲間のナイアス達がこぞって処女神アルテミスに仕えている中、唯一色気づき、日がな1日美容やおしゃれにばかり時を費やす娘でした。
その日も華やかに身を飾り、泉の近くで花摘みをしていたところでヘルマプロディトスを見かけたのです。
ヘルマプロディトスは、心ゆくまで辺りを散策した後、眼前に湧き出る綺麗な泉に身を浸そうと衣服を脱ぎ捨て、水に飛び込みました。
彼の光り輝く裸身を見てますます恋に燃えた彼女は、獲物が自分の泉に飛び込んだのを見るなり、ものすごい勢いで衣を脱ぎ捨て、頭から泉に飛び込んだ水の精は、慌てふためくヘルマプロディトスの身体に蛇のように絡みつき、強引に口づけを奪います。
触れられるのを厭う少年が必死で逃げようとするのを力ずくで封じ、ひたと抱きついて勝ち誇った笑みを浮かべました。

 ヘルマプロディトスにとっては、殆ど呪いに等しいような、この恋に狂った女の祈りが天に届いたとき、彼ら2人の身体に恐ろしい異変が生じました。触れ合った肌と肌の境界があやふやになり、まるで影が重なるように溶け合って行き、仰天したヘルマプロディトスの悲鳴さえも既にもとの凛々しい声ではなく、男のものとも女のものともつかない中途半端に甲高い声に変わっていました。
逞しかった身体の線は、みるみる丸みを帯び、何と胸までふくらんでくる始末。

 絡みついていたサルマキスの姿が消え失せた後に残ったのは、まるで女のように柔和になってしまった――しかし男性の象徴もちゃんと残っているという、世にも奇妙な肉体になってしまった自分ただひとり。 
 
 望みもしないのに変な女に惚れられた挙げ句、両性具有者にされてしまったヘルマプロディトスは、自分の運命を激しく嘆き、父ヘルメスと母アプロディテに祈りました。
自慢の息子が、蒙った悲運に心痛した両親が彼の望みを叶えた為、サルマキスの泉は、恐ろしい魔力を持つ不浄の泉として後世に悪名を残す事となりました。

 しかし、両性具有となった後もヘルマプロディトスの美しさには変わりがなく、むしろ男にも女にもない摩訶不思議な魅力の持ち主として、それまで以上に注目を浴びるようになりました。
芸術作品に好んで描かれたのもその魅力、古代ギリシア以来、両性具有者は「普通の男性・女性が抱える欠落が補完された理想的人間、完全性の象徴」と見なされ、聖なる憧憬の対象とされました。男性のままでいたかったヘルマプロディトスにとっては、迷惑な話でしょうが、やはり人間は常ならぬ美に惹かれるものなのですね。
 
続く・・・

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