鞆港の埋め立て免許差し止めを命じた1日の広島地裁判決後、福山市鞆町を訪れる観光客が急増している。初の週末となった3、4日は観光鯛網(たいあみ)などのピーク時に匹敵するにぎわいになり、職員を急きょ増やして対応する施設も出た。
鞆ゆかりの坂本竜馬をテーマにした「いろは丸展示館」は1日以降、通常の2、3倍に当たる来館者が続いている。初の日曜日だった4日はこの20年間で最も多い約550人が来館し、窓口職員を1人から2人に急きょ増やして対応した。
鞆架橋計画の埋め立て予定地や、「国民の財産」と裁判所が指摘した景観を尋ねる人が多いという。赤松宏記館長は「判決が全国的に報じられた影響だ。北海道や九州からの人もいる」と驚く。
歴史的景観の価値を認め、その保護を理由に公共事業の差し止めを命じた全国初の判決は新聞やテレビが大きく報道。鞆町をアニメ映画「崖(がけ)の上のポニョ」の舞台モチーフにした宮崎駿監督も判決にコメントしたことでも注目が集まったようだ。
鞆町中心部で土産物品などを販売する「ともてつバスセンター」では判決から1週間の売り上げが前年同期の数倍に急拡大。3、4日は店近くの湾岸沿い道路が路上駐車であふれ返ったという。
鞆町へのアクセスなどの問い合わせ電話も市観光課などに相次いでおり、鞆町の観光関係者は「判決は数億円の宣伝価値があった」と思いがけない効果に喜んでいる。
【写真説明】鞆町の常夜灯近くの景観を楽しむ旅行者。判決後に観光客が急増している
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