2009年10月09日
伊藤 元重 | 東京大学大学院経済学研究科教授 | 経歴はこちら>> |
---|
テレビなどのニュースや番組を見て海外の現状を判断するときは、気をつけなくてはいけない。一部だけを針小棒大にしたイメージを植え付けられる可能性があるからだ。
昨年のリーマンショックからしばらくして、世界経済危機を議論するため、中東のドバイに行った。「バブルの塔」とでも言うような高層ビルが次々に建設されていたドバイは金融危機でさぞかし大変な状況にあるだろうと予想して出かけていった。
しかし予想に反して、旅行者の私の目に映ったのは人であふれるレストランや高級車が多く走っている近代都市であり、どこに金融危機の傷跡があるのか分からなかった。
○目で見たドバイとテレビとの違い
帰国してしばらくして見たテレビ番組では、金融危機で揺れるドバイの風景が放映されていた。失業者が多くいる街角や、建設の止まった高層ビルなどが映像で描き出されていた。
正直言って、私が見てきたドバイの風景とあまりにも違うのに驚いた。もちろん、私もドバイの一部しか見ていないのだから、どこを見るのかでその印象が違って見えるのだろう。
しかし、自分の目で見た風景とテレビに映し出される風景があまりにも違うので、テレビの映像もあまり単純に信用しない方がよいと感じた。
→次ページに続く(繰り返されることによる錯覚)