大阪、神戸両市で教壇に立つ在日外国人教員のパネル討議「外国籍教員は『ダメで無能な教員』ですか?」が、神戸市中央区で開かれた。文部科学省通達で外国人教員は「教諭」ではない「常勤講師」と規定されており、学校現場で子どもや保護者と向き合いながら抱える、苦悩と虚無感が切々と語られた。
全国の公立学校には約200人の外国籍教員が採用されているが91年、文部省(当時)が「期限を付けない常勤講師」として採用するよう都道府県教委などに通知。講師は主任などになれないため、管理職任用の道が閉ざされている。ベテランでも学年・進路・生徒指導主任など責任ある立場になれず、現場で混乱をきたしている。
教員採用試験の国籍条項撤廃を定めた同年の「日韓覚書」以前に教諭採用され、何度も主任を務めた大阪市立巽西小教諭、金相文(キムサンムン)さん(58)は、覚書と文部省通達で管理職任用の道が事実上閉ざされている矛盾を紹介。「地方参政権が付与されれば外国籍教員の問題も解決すると言われてきたが、教育現場から解決することが重要。若い教員と共有しながら取り組みたい」と述べ、60人余りが教壇に立つ大阪で外国人教員のネットワークづくりを進めている現状を説明した。
一方、神戸市教委の指導で学年副主任を解任され、職員会議で名簿から名前を削除された神戸市立垂水中教員、韓裕治(ハンユチ)さん(43)は「今年度、謝罪もないまま改めて学年副主任に任命された。外国籍の子どもたちに『差別に負けるな』と教えてきた自分が、管理職や教育委員会に屈したら子どもたちにウソを教えていたことになる」と話した。
生徒指導部長を解任され2年間、「手当のつかない学年主任」を務める兵庫県立湊川高教員、方政雄(パンジョンウン)さん(58)は「教員は日本の子どもたち、社会を良くするために教壇に立っているのにむなしさを覚える。活動を通じ、多様性を認め合う懐の深い社会に変えていきたい」と訴えた。【中尾卓英】
毎日新聞 2009年10月9日 地方版