記事が気に入っていただけたら
下のバナーをそれぞれクリックしてください

以下は「しんぶん赤旗・日曜版」(2009年10月11日号・35面)から直接貼り付け。
========================================
空港乱造 日本 日本航空(日航)の経営危機が大きな問題となっています。背景にある自民党政権下のゆがんだ航空行政の数々。なかでもくっきり浮かんでくるのが地方空港ラッシュやアメリカの圧力です。
日航の2009年4―6月期の連結決算は990億円という過去最悪の赤字。金融機関も新たな融資に難色を示しているといいます。
新政権の前原誠司国土交通相は再建計画を策定する専門家チームを発足させました。
日航機長で、航空労組連絡会の山口宏弥議長は、日航の経営危機の要因についてこう指摘します。
「日航の決算をみると、本業以外の営業外損益(支払い利息や航空機処分損など)や特別損益で巨額の赤字がでている。ホテル・リゾート開発などをおこない失敗した問題もある」
問われるのは経営陣の責任だけではありません。
なぜ多い? 不採算路線 前原誠司国土交通相も日航問題の要因のひとつとして地方空港を乱造した国の責任に言及しています。
前出の山口議長がいいます。
「日航は本業でも、国内に数多くの不採算路線を抱えており、それが経営を圧迫している」
なぜ日航は不採算路線を多く抱えることになったのか。
『血税空港』(幻冬舎新書)著者で、ノンフィクションライターの森功さんが解説します。
「実は国は需要も考えず、全国で空港を乱造してきた。現在、日本の狭い国土に、97もの空港がひしめきあっている。その多くが赤字だ」

過大予測にもとづいて 実は、空港乱造を可能にする仕組みがありました。1970年度に創設された特別会計の「空港整備勘定」(旧空港整備特別会計)です。
航空会社が支払う空港使用料や着陸料などをプールし、各地の空港建設や維持運営費に充てられます。09年度の当初予算額は実に5280億円にのぼります。
そのため日本の着陸料などは諸外国に比べ著しく高額。日航の負担は年間約1千億円前後とされます。
自民党政府が過大な需要予測にもとづいてプール金からどんぶり勘定で空港整備を続けてきたことのツケを、国民や航空会社にまわしてきた構図です。
そのひとつが、総事業費約1900億円を投じた富士山静岡空港。約1655億円を静岡県、残りは空整勘定から約245億円が出されています。
この空港の需要予測は、当初の178万人(95年)が121万人(2000年)、106万人(05年)とズルズルと下方修正されました。それどころか、今年6月に開港してからの客足も伸びず、下方修正した予測にすら届かない見通しです。
前出の山口議長がいいます。
「空港ができても、飛行機が来なければ意味がない。日航は利用者が少ない路線を政治家の圧力や行政指導で飛ばされてきた」
米航空産業利益のため 空整勘定による空港建設ラッシュ。この背景には、米国からの“圧力”もありました。
80年代の日米貿易摩擦などを理由に米国は90年、日米構造協議で対日要求をつきつけました。
この協議で決まったのが430兆円(後に630兆円に増額)という「公共投資基本計画」でした。
米国は、赤字の関西国際空港や中部国際空港、広島空港、北九州空港などの建設を要求しました。
森さんが解説します。
「空港が増え、路線が増えれば、ボーイングなど米国の航空産業は航空機売却などで潤う。これが米国の狙いだ」
山口議長はいいます。
「規制緩和で、ドル箱路線でも低価格競争が激化し、更に経営を圧迫しています」
「そもそも航空会社の使命は安全運航と国民の足としての公共性です。航空行政の失政のツケを安全切り捨てにつながる労働者のリストラや、単純な不採算路線からの撤退で解決するべきではない」
日本共産党は新幹線や道路、空港という輸送手段がばらばらに整備され、輸送能力が過剰で赤字が増えていくという今のやり方をあらため、総合的な交通政策を確立することを主張しています。