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報酬政策

2009年10月9日0時1分

 グローバルな金融危機の再発を防ぐための議論の中で、最近特に興味を引くものは、金融機関の報酬政策の見直しである。

 この9月に行われたピッツバーグのG20首脳会議で金融機関の自己資本規制の強化とともに報酬政策についての枠組み合意がなされた。それは、複数年にわたるボーナス保証を避けること、変動報酬の相当部分の支払いを繰り延べて業績に連動させ適切な取り戻しの対象とすること、報酬政策や体系の開示義務を課して透明化することなどである。

 なぜこのような規制が必要なのか。報酬は労働の対価でありかつ資本主義経済ではリスクを取り収益をあげた者が相応の報酬を受け取るのは当然のことだ。リスクテークの行動は、市場経済を活性化する原動力でもある。リスクを管理しリスクに見合った収益を期待することは、自然の流れであると思う。

 しかし、今回の金融危機の原因の一つに過度なリスクテークにより短期的に高収益を追求しようとした金融機関の行動があった。さらに、政府による多額の金融支援を受けた金融機関の役職員が高額のボーナスを受け取っていた事実などが問題となった。

 もともと金融機関は他の企業と比べ、資金の決済や個人や企業に対するファイナンスを提供するなど公共性が非常に強い。このため政府として簡単に倒産させることができず、金融機関に対するセーフティーネットなどを作ってきた。本来は各金融機関自らが公共性を認識し、自律性を強く持ち、自己規制を行うべきだ。

 もしこれができていないとすると、公的部門からの規制を受け入れるしかない。自由があるところは、必ず規律もあるべきだと思う。(QJ)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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