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【甘口辛口】10月8日

2009.10.8 05:00
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 「自分のファンでいてくれるなら、市役所に返してほしい」。ボクシングのWBCバンタム級王者、長谷川穂積(28)のブログでのそんな誠実な訴えが、持ち去った男の心を揺さぶったらしい。故郷の兵庫県西脇市が市民栄誉賞を贈った際、長谷川が市に寄贈し市役所玄関ホールに展示していたグローブが盗難にあったのは5日だった。

 それが翌日には、匿名の男からの電話で市内の倉庫で見つかった。盗みは悪いが、あきらめのいい男だ。同じ日、WBAフライ級タイトルマッチで、デンカオセーン(タイ)に判定負けした亀田大毅陣営は「3ポンイト上回っていた。文書とビデオを提出したい」と、7日WBAへの提起と再戦要求を明らかにした。

 潔い敗者にはなれなかった。大差はつかなかったが、王者は序盤から徹底してボディーを狙ってポイントを稼いだ。疲れた後半は老かいなクリンチワークで大毅の攻撃をかわした。ある関係者は「クリンチは試合をつまらなくするが、一つの技術。大毅が頭から入ってくるから仕方ない」と指摘した。

 王者が狙いを定めた大毅の薄いボディーは、確かに十分に鍛え込んだことを物語っていた。だが、ガードを固めて前に出ても攻めが単調すぎた。大毅のパンチが当たるたびにアナウンサーが大騒ぎしたものの、これが50戦目という王者との経験の差は歴然としていた。再戦もいいが、大毅はまだ20歳ではないか。

 強い相手ともっと戦って、周囲から「そろそろ再挑戦を…」という声が起こってからでも遅くない。いまは威勢のよさだけで、技術も人間性も磨くべき余地がありすぎる。盗人を一夜で改心させるような人間性豊かな王者を目標にしてほしい。(今村忠)



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