クロッキーF美術館コレクション vol.2009 Sep 19

24 pictures
A3 (420 x 297, thin paper)

画 材: 鉛筆、A3上質紙
時 間: 3分、5分、10分、ムービング
モデル: アキト、あみ(バレリーナの衣装)、ゆか

note
 個人で活躍する男性モデル『アキト』が主催するクロッキー会に参加させて頂いた。私がアキトと出会ったのは2008年3月8日で、彼が美術界で活動を始めたのはそれからだから、長く活動しているわけではない。それでも、彼のひたむきで明るく誠実な性格に引き寄せられるようにして、今回のクロッキー会場には35人以上の描き手が集った。さすが! の一言に尽きる。彼のような若者が名古屋で活躍することは、この地方の美術活動に大きな活気を与える。

 しかし、たくさんの人が集るところには、禿鷹のように金を目当てにした者も来る。その例にもれず、今回のクロッキー会場には、会場全体を幻惑するような音楽を主催者に無許可で流し続ける者、事前に契約したモデル料を値上げせよ発言をした者がいたと聞いた。これらの行為は、いずれも単なる嫌がらせではすまされない。私はモデル『アキト』を初めて描き、撮影した作家として、彼のファンの1人として、モデルと作家をつないでいこうとするアキトを応援したい。

 次に、今回のクロッキーにおける問題点を明確し、再発防止の一助としたい。彼はまだ若く、自分からは言い難いこともあるので、そうした部分は年老いた私が明言するのが筋であろう。

クロッキー中の音楽
 音楽については、クロッキー中にアキトさんに質問した。彼は「モデル『あみ』の要望だと思う」と答えた。モデル自身が、そのポーズを高めるために音楽を使うなら大歓迎である。なぜなら、描き手はその音楽を作品作りのヒントにできるからである。しかし、実態は違った。主催者、モデル(、描き手)を無視した者による行為だった。これは断じて許されることではない。

 クロッキーはリズムを大切にする描画方法であり、描き手はモデルを通して『音楽』を創造する。実際、一流の作家は独自の創作リズムを持ち、そのリズムにしたがって制作を進める。完成した作品は一瞬にして鑑賞者の前に現れるが、分析的に見れば作者のリズムを感じることは容易だ。したがって、場に合わない音楽は悪臭と同様、会場を汚染するものであり、断じて排除されるべきものである。

 ここは音楽を聞く場所ではないし、BGMを嫌う場所である。もし、それでも音楽をかけ、作品作りの一助としたいなら、個人でモデルを雇うべきである。たくさんの人が集る場所にはマナーがある。まして、今回のようにモデルを360度から2重3重の輪を作って描くような状況ならなおさらである(乗客率200%の満員電車を想像したまえ!)。もちろん、それが主催者の趣味によるものなら一向に構わないが、そのような会の末路は見えている。

モデルの賃金
 世の中には適切な料金がある。安すぎても高すぎてもいけない。この微妙なバランスが壊れると、社会そのものが崩壊する。今回たくさんの金が集ったからといって、事前に契約してあった金額や時間を簡単に変更してはいけない。もし、あまりに沢山集り過ぎてしまったと判断するなら、金を出した人に返金するのが筋である。そうすれば、窮屈な思いをして描いた参加者は納得し、次回も来るだろう。今回は誰も予想できないほどの盛況だったから仕方ない。また、来よう! と思うものである。

 これとは逆に、予想外に集った金をモデルに払うことは、モデルにとっても会自体にとっても悪いことしか起きない。若く経験が浅いモデルに不適切な金を渡すことは、間違った考えを植え付けることになる。いわゆる甘い汁を覚えることは感覚を麻痺させ、予定通りの健全な活動をつまらない、と感じるようになる。また、今回の余剰金を運営資金として確保するのは、会を存続させるための当然の策である。一般に、今回満足に描けなかった参加者は来なくなる。

 そもそも描き手が来なくなれば、モデルは仕事ができないし、主催者もモデルに支払うことができない。とくに適切な価格設定は、主催者の腕の見せどころでもあり、それができなければ人をまとめたり繋げたりすることはできない。第3者に言いくるめれているようでは話にならない。初めに述べたように、高くても安くてもいけない。

 アキトさんに対する私の応援は、以上である。彼に対して厳しい注文もつけたが、とにかく今回で第6回を迎えた『みんなのクロッキー』は、これからも発展していかければならない。私は今回初めて参加させて頂いたが、この会はアキトさんの人柄と努力によって創設されたものであり、アキトさんを中心に集ったみんなのクロッキー会である。私もその中の1人としてできる限りの協力をしたいし、そこでも描きたい。それが私の願いであり、みんなの願いである。支えあい、情報を交換しあい、より良い活動をすることがアキトさんの願いである。

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