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「歴女」は生ぬるい? “歴士”が増加中 好調の歴史雑誌も
歴史好きの女性(歴女)による「武将萌(も)え」など、武将をアイドルとしてとらえる“軟派”な風潮に疑義を唱える声がにわかに上がっている。お堅いイメージのある歴史雑誌が部数を伸ばしているほか、歴史好きが集うバーが人気を集め、真摯(しんし)で活発な歴史談義が交わされている。時代は「歴女」から硬派な「歴士」に取って代わるのか?
毎週水曜午後6時過ぎ。東京・神田小川町のバー「渡部商店」に、一見共通点のなさそうな老若男女が集まってくる。カウンターのみ15席ほどの店内は、歴史をめぐる話題でもちきりだ。次第に客席に座りきれない酔客が店外にあふれ、自然と立ち飲みとなる。
経営者の渡部麗(りょう)さん(35)によると、もともとごく普通のバーだったが、趣味が高じて約2年前から「歴史バー」として開放した。口コミやインターネットを通じて話題になり、各地から歴史ファンが訪れる名スポットとなっていった。
渡部さんは「ネットの普及もあって、歴史好き同士が交流する機会が増えている」と指摘。「歴女に対抗して、硬派な歴史好きを私は勝手に“歴士”と呼んでいる。萌えがきっかけでもいいと思うが、歴史は点ではなく線として続くもの。ブームとして消費してはいけない」と強調する。
出版不況のなかで、着実に部数を伸ばしている歴史雑誌もある。PHP研究所の月刊誌「歴史街道」だ。昭和63年の創刊時からしばらくは10万部台を維持していたが、一時は6万部台にまで落ち込んだ。
しかし、平成16年に現在の編集長にバトンタッチすると“V字回復”を見せ、現在約12万部まで伸ばした。
「歴史を求める潜在的ニーズはあると思っていた」と語るのは辰本清隆編集長。イラストや図を多用した「わかりやすさ」への配慮を徹底した上で、「歴史を通じて現代へのヒントを考えてもらえるような紙面作りを心がけてきた」という。読者層も創刊時に比べて若年化し、小、中学生の読者もいるという。女性読者も全体の約4割を占める。
辰本編集長は「確かに(歴女が好むとされる)戦国武将特集は人気があるが、日露戦争や太平洋戦争といった近現代史にも高い関心が寄せられる。性別にかかわらず、全力で苦難に立ち向かっていった人間像を知ることは、いつの時代も普遍的な欲求なのではないか」と分析している。(三品貴志)