やっぱり気になる地デジの「時報問題」、ワンセグではどう? 予約録画は大丈夫?
そうだね(情報・話題・悩みの解決方法を紹介します)
デジタル放送では映像信号を圧縮して送信し受信後に元に戻す処理が必要なため、地上アナログ放送より実際の放送が1〜4秒遅れて画面に表示される。このため、時報は廃止され、テレビの時刻表示は変化の仕方を工夫し、影響を最小限にしている。また、緊急地震速報の表示も地上アナログ放送より遅れる現象が生じることから、総務省、放送局および電機メーカーは解決方法を検討している。
■地デジ(12セグ)とアナログ放送の時報映像を比較
念のため、アナログ放送と地デジ(12セグ)の場合。おなじみのNHK教育の正午の時報でチェックした。5秒前から秒針が表示されるのがアナログ放送だ。これで時計の時刻合わせをしたことのある人も多いだろう。「ポッ、ポッ、ポッ、ポーン……」――この音を聞くと、正確な時間というものにありがたみを感じてしまう。
その時、地デジはというと、やはりワンセグと同じ海辺の家のイラストが! こちらは秒針の映像も時報の音もない。う〜ん、わずか数秒のズレとはいえ、なんか正午という時間がうやむやにされてしまってスッキリしない。でも、確かに12セグの地デジでは、時報は「消えた」。
■なにはともあれ総務省に聞いてみた
秒針はないけど時計が表示されて、時報の音も流れるのに、ワンセグ放送はワンテンポ遅れている。これは間違えて時計を合わせちゃったりする人も出るだろうし、もうちょっと告知してもいいのではないだろうか。同じワンセグであっても、端末によってズレが生じるのも気になる。
こんな私の疑問を、総務省情報通信政策局地上放送課にぶつけてみた。
――どうして、ワンセグはアナログ放送よりワンテンポ遅れて映るんですか?
総務省地上放送課:デジタル放送は、放送波を送出する前にエンコード作業を行い、さらにそれをテレビ側でデコードするため、多少時間がかかってしまいます。また、同じワンセグ端末でも、機種が異なれば内部のCPUの復元力に差があるため、差が出ます。
――それでは時報などの放映は正確じゃなくなりますよね? しかも端末によって差があるので、いっせいに早めて放送する、なんてこともできないし。
地上放送課:そうですね……。
あれれ、なんか行き詰まってしまったぞ。困ったなぁ……。
■えっ、放送の遅れは「地域差」もあるの?
う〜ん、これはテレビ局の人にも聞いてみなければならない。当然、時刻がズレることは承知しているだろうし、そのための取り組みなど、何か対策を施しているのだろうか。日本放送協会(NHK)の広報部に伺ってみた。
――あのう、ワンセグや地デジ放送ってアナログより遅れて放映されますよね? 総務省の方にその理由は伺ったんですが、それについてどうお考えですか?
NHK:ワンセグや地デジの遅れは、端末だけでなく地域差もあるんですよ。東京で受信する場合、1セグメントに圧縮するのに2秒ほどかかっていますが、大阪で受信する場合は、東京から生駒山を抜け大阪まで光ケーブルを通るのに、さらに1秒かかっているんです。
すると端末側でデコードする時間も含めると、大阪ではアナログ放送より4秒程度も遅れることになる(東京のワンセグユーザーよりも1秒遅い……)。このままでは、大阪の人は正月の「ゆく年くる年」も「サザンのカウントダウンライブ」も、すべて4秒遅れ。世界中が「ハッピーニューイヤー!」と叫んでいるのに、ワンセグ&地デジユーザーは、4秒遅れで参加することになる。これはなんだか悔しいではないか。
でもまぁ、その程度なら目くじらを立てることもないか。しかし、もっと重大な問題もあった。それはビデオやDVD、HDD録画機能の中にある自動時刻合わせ機能だ。これは、NHK教育放送の正午の時報の音「ポッポッポッピーン」の音で、録画機器の時刻修正をする機能のこと。機器側の時計と放送波がズレていると、予約録画はどうなる?
■デジタル録画機の自動時刻合わせ機能はどうなってる?
几帳面な人なら、テレビ番組を留守録するとき番組開始と同時に録画がスタートしないのは気分が悪いだろう。地デジで正確な時刻より3〜4秒遅れて映像が表示されるとしたら、機器側は3〜4秒早く録画をスタートすることになるので、尻切れトンボにならないよう録画終了時刻についてはちょっとシビアになる。とは言え、実際はレコーダーの録画というのは、通常セットした時間より少し早くスタートするし、終了時もCMだったりするのでそれほど実害はなさそうだけど、どうなのかな?
これもメーカーに直接聞いてみた。まずは東芝の広報部。
――ワンセグや地デジ放送は実際の時刻より少し遅れて映像が表示されますが、東芝のレコーダーで自動時刻合わせ機能をONにしたまま留守録した場合、録画スタートが少々早くなったりしませんか?
東芝:自動時刻合わせ機能で使う正午の時報も数秒遅れで届きますから、留守録も数秒遅れとなり、実害はないはずです。
ああ、なるほど。時報も遅れてるんだからね。じゃあ、ヘタに時刻合わせを手動でしない方がいいということかな。
次に、松下電器産業の広報部にも伺ってみる。
松下電器:当社の録画機器は、デジタル放送対応機もNHK教育放送の時報に合わせて時計をセットしています。それに加え、デジタル放送信号に含まれているのTOT(Time Offset Table=特定地域の時間のずれに関する情報)で補正しています。TOTはデジタル放送の番組時刻の基準となっているため、番組時刻にぴったり合った録画ができます。
なるほど、独自の工夫をされているようだ。
――実際には前後数秒ほどのりしろ(余裕)をもって録画される機種もあるようですが、御社のHDD&DVDレコーダー「ディーガ」の場合は、どうでしょうか?
松下電器:“地デジディーガ”は、録画開始指示は1秒前に出します。録画停止指示はぴったりに出します。
――アナログ放送に比べ、地上デジタル放送(12セグ)やワンセグは、現状、ワンテンポ遅れて映し出されていますが、技術の進歩で、2011年にはエンコードやデコードが素早くできて、遅延の少ないレコーダーが発売される可能性はあるのでしょうか?
松下電器:遅延を短縮することはできるでしょうが、エンコードが必要であるため原理的に遅延は生じます。
実はこの最後の質問は、東芝さんにもしてみた。「それは、簡単にできますとは言えないですけれど、いずれはそうするべく、開発スタッフは努力しています」という回答をいただいた。
もともと電波が届くスピードも、地域差があるし、完璧にアナログとデジタルの“時差”が埋まることはないにしても、数年後、技術が進歩し、限りなく時差ゼロに近づくことはできるのではないか。そうあってほしい!と、思う。やはり“ゆく年くる年”は、リアルタイムじゃないとちょっとしらけちゃう……と思うのは、きっと私だけではないはずだから。
とにかく、残念ながら時計の時刻合わせはワンセグや地デジ放送に頼ってはダメ。ラジオやNTTの時報サービスを利用するように気を付けよう!
( nikkei TRENDY net 平戸 京子)
2009年08月31日 ニュース コメント(0) トラックバック(0)