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「植物工場」普及へ本腰2009年09月10日 人工光を使って野菜などを育てる「植物工場」=キーワード=の普及に農林水産省と経済産業省が本腰を入れ始めた。両省は約50カ所の工場を3年後に3倍に増やす目標を掲げ、仙台市内には空き店舗を活用したPR施設が11月から期間限定でオープンする。高コストなどの課題をどこまで克服できるかが普及の鍵だという。(永田工) 空き店舗の30坪ほどのフロアに発光ダイオード(LED)照明を当てた野菜の栽培装置を置く――。補正予算を活用して経済産業省が募集した「推進事業」には、広告会社「協同広告」(東京都千代田区)のPR施設事業が採択された。 同社東北支社によると、施設の場所は仙台市の中心商店街にある空き店舗。小型のデモンストレーション用の栽培機器を設置し、実際にリーフレタスなどの野菜を栽培。ビデオを上映して、一般の消費者に野菜の安全性をアピールするほか、新規参入に関心のある農家や企業、野菜の購入を検討するレストランなどに資料を提供するという。 同社の宍戸歩・東北支社長(54)は「低農薬野菜のマーケットが広がるなど、農業分野に注目が集まっており、従来の顧客以外にも広告ビジネスが広がる可能性がある」と事業の狙いを話す。 東北経済産業局によると、植物工場には(1)気候に左右されずに安定的に生産できる(2)農地以外でも機器を設置できる(3)形や大きさをそろえられ、加工が容易(4)無農薬で安全――などのメリットがあるという。一方で課題は、運営費用が露地栽培の50倍近くになるなど、生産コストが非常に高くつくことだ。 同局産業振興課の鈴木光弘・課長補佐は「寒冷地の特徴を生かし、雪氷を溶かした水を使ったり、枝切りしたリンゴの枝を燃料に活用したりすることも考えられる。冬に取れない野菜を通年で栽培することで需要に応えることもできる」と話す。 県内では警備会社セコムの関連会社「セコム工業」が白石市で植物工場を運営している。同社の本業はセキュリティー機器の製造だが、人材活用の一環として、90年から人工光を使ってフレッシュハーブの栽培に着手。「かおり」のブランド名で東京の築地市場や仙台市内にも出荷しているという。 だが、同社の後藤明社長は「あくまで武士の商法」と言い切る。収支は「ぎりぎり黒字」だが、「露地物に比べ、価格がいくらになるか分からないのがネック」。ファストフード大手から取引の打診を受けたこともあるが、「膨大な量を安く供給することはできない」と断ったという。 一方で、東北経済産業局は「空き工場や学校の敷地を使って植物工場ができないかとの問い合わせは受けている」という。「撤退した植物工場もあるとは聞いているが、課題を克服していきたい」としている。 植物工場…LED照明などの人工光や空調で制御した栽培施設で、葉もの野菜や果物を生産する設備。農事組合法人や食品業界以外に異業種からの参入も目立ち、東北経済産業局によると、4月現在、東北では7工場が稼働している。
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