ウィニー開発者に逆転無罪 「違法行為勧めていない」
ファイル共有ソフト「ウィニー」を開発、インターネットで公開して映画やゲームなどの違法コピーを助けたとして著作権法違反ほう助の罪に問われた元東大助手金子勇被告(39)の控訴審判決で大阪高裁は8日、罰金150万円とした一審京都地裁の有罪判決を破棄し、逆転無罪を言い渡した。
小倉正三裁判長は「著作権侵害を主な用途として勧めウィニーを提供したとは認められず、ソフトの公開はほう助に当たらない」との判断を示した。
ファイル共有ソフトを使った著作権侵害をめぐり、開発者本人が刑事責任を問われた初のケース。さまざまな目的で利用できるソフトを公開したことが悪用による著作権侵害の手助けに当たるかどうかが争点だった。
金子被告は一貫して無罪を主張し「技術開発の現場を萎縮させる」と一審判決を批判。高裁の判断が注目されていた。
小倉裁判長は判決理由で、まず著作権侵害ほう助罪の成立について「提供したソフトの主な用途が著作権侵害だと容認した上で提供しなければほう助に当たらない」と判断した。
さらに「ウィニーそのものは価値中立のソフト」と認めた上で「金子被告は公開時に著作権侵害をする人が出る可能性を認識、容認していたが、違法ファイル交換をしないよう注意喚起もしていた」と指摘。違法行為を積極的に勧めて提供したものではない、と認め、ほう助罪の成立を否定した。
ウィニーは2002年に金子被告が公開。無料で、操作性に優れていることなどから人気を集め、現在でも1日当たり約20万台のパソコンで使われているとされる。
金子被告はウィニーをホームページ上で公開し、03年9月に群馬県高崎市の男性ら2人=有罪判決確定=が映画などを違法にダウンロードできる状態にするのを助けたとして起訴された。06年12月の京都地裁判決は「ウィニーが著作権侵害に広く利用されていると知りながら、公開を続けたのはほう助に当たる」と判断。検察、弁護側双方が控訴していた。