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10年後、本当にやばいっすよ

2009年10月6日

写真こころのプロジェクトの「夢先生」として全国の小学校を回る安永聡太郎さん。サッカーに興味のない子もいる小学校をまわっているからこそ、今のサッカーをとりまく環境が良く分かる。

 「Jリーグってなに? ガンバ大阪がいるリーグなの?」

 「日本代表の川口って、どこのチームでプレーしているの?」

 この何げない疑問のひと言。日本サッカー協会が全国の小学校で実施している「こころのプロジェクト」の授業で、スタッフをしている元選手の安永聡太郎さんが小学生から聞いたものだ。

 最初のひと言は、福井県の小学生のひと言だった。Jリーグのクラブのない県だから、まだわからないでもない。でも、二つ目は、サッカーどころの静岡県藤枝市の小学生のもの。藤枝市はGK川口能活の所属するジュビロ磐田はすぐそばの場所なのに、こんなひと言が小学生から出たという。

 私事ながら今年の4月、スポーツグループから事件などを担当する社会グループに仕事が変わった。せっかくの機会だからスポーツを競技の側面からではなく、別の面から見てみようと、安永さんに取材した時、この話を聞いた。

 安永さんによると、「小学生がテレビを見ている時間にJリーグがやっていないのが原因の一つ」だという。テレビの地上波で日本代表の試合は見られても、Jリーグの試合の中継はほとんどない。ニュースを見ても、午後7時前後や午後9時ごろのニュース番組では記録が少し流れるぐらいで、映像はほとんど流れない。安永さんは「子どもたちは、日本代表の中村俊輔や、クラブワールドカップに出たガンバは、盛んにテレビでやっているのでわかる。でも、Jリーグはやってないのでほとんど分からない」と解説する。

 いま、Jリーグのクラブがサッカー教室を開けば、満員盛況のことも少なくない。子どもたちのサッカー熱はJリーグ開幕後、飛躍的に高まった。でも、それはサッカーが好きな人の世界での内輪の話にすぎない。サッカー界で常識のことが、それ以外の場所に行けば、常識では無くなる。今の小学生にとっては「中田英寿ってだれ?」なのだという。安永さんは全国の小学校を回り、サッカー界とは一歩離れたところからサッカーを見てきた。だからこそ話す。「もっと選手たちが地元に積極的に出て、ボランティアして交流すべきだ」

 終盤戦を迎えたJリーグ。混戦で盛り上がりを見せる。ただ、私がいまの同僚や取材先と雑談でサッカーの話をしても、混戦になっていることすら知られていないのが現実だ。Jリーグやサッカー関係者に危機感がないわけではないだろう。ただ、安永さんも言っている。「このままではサッカー界は10年後、本当にやばいっすよ」(河野正樹)

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