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たった一人の改革

2009年10月8日0時26分

 財政危機の大阪府庁に単身乗り込んだ橋下氏が、府の職員に最初に発した言葉は、「破産会社の社員としての意識で働いてほしい」というものであった。危機意識の共有を迫ったのである。

 橋下氏はその後も、巧みにメディアを活用し、他の首長との連携を進める一方、職員の忠誠を拡大し、驚くべきことに黒字財政を確保するまでに至った。勇気と智恵があれば、たった一人でも改革は起こせるのである。そして、府民に希望と活力を与えられる。

 一方、国政では、政権交代を実現した民主党が、目玉商品である官僚改革を進めている。これに対し、しょせん狡猾(こうかつ)な官僚に牛耳られるだけ、という冷ややかな評論も多い。

 だが、自民党の場合は、利権・肩書渇望症が優先し、行政改革などは頭からなかったのに対し、民主党には改革への強固な意志がある。国会やテレビ、あるいは選挙期間中の論戦を見れば、すでに政治家以前の人間力でも両党の議員の差は歴然としている。

 これはいってみればカンニングペーパーで長年しのいできた学生と、参考書すら満足に手に入らずに苦学してきた学生との差といえる。

 いまやパラダイムは急速にシフトしようとしている。官僚は変わり身の早さが身上である。強固な意志があれば、志を捨てていない若手官僚を既得権益者から分断し、強い味方とすることも可能だろう。

 衆参両院合わせ約400人もの議員が国民目線を失わない限り、国民の圧倒的支持は続くので、官僚支配を覆すという改革は難しいことではない。

 そしてそれは、経済に活力を、社会に公明をもたらすことになる。(十菊)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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