その病気の治療のために、ヒゲの殿下こと三笠宮寛仁さまは入退院を繰り返している。米国ではフォード元大統領のベティ夫人が闘病体験を公表し、社会的反響を呼んだ。アルコール依存症である。
「もうろう会見」の中川昭一元財務相も同じ病気だったのではないかと、多くの専門家が指摘する。大事な会談の前だからこそ、不安を和らげるために飲む。理性のある人なら選ばない方法を選ぶのも、この病気の特徴らしい。
ただ彼の場合、寛仁さまらと違ってそれを公に認めたことはなかった。誰でもなる可能性があり、回復が可能な病気にもかかわらず、まだまだ日本では偏見や誤解があるからだ。政治家にとって致命傷と考えたのだろう。
会見以前から飲酒トラブルが絶えず、病気の自覚はあったはずだが、飲酒機会の多い職業が治療の妨げになってきた面もある。節酒や一時的な断酒は依存症を余計に重症化させるという(仮屋暢聡「アルコール依存の人はなぜ大事なときに飲んでしまうのか」阪急コミュニケーションズ)。
そうして大臣のいすを失い、選挙に敗れ、どん底に落ちた。しかしそれは同時に、実は回復への絶好の機会でもあったのだが、彼にはそうは思えなかったのだろうか。昨日見つかった遺体からは、アルコール成分が検出された。
弱っていく姿をじっと見守り支えてきた家族を思うと、胸が締め付けられる。あの会見から彼が帰宅した夜、玄関先で夫人が掛けていた「頑張れ頑張れ」の声が耳を離れない。