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光母子殺害実名本「安易に一線越えた」作家ら疑問の声も(1/2ページ)

2009年10月8日2時57分

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写真:書店には実名を記した題名の本が並んだ=7日、東京都千代田区書店には実名を記した題名の本が並んだ=7日、東京都千代田区

 山口県光市の母子殺害事件で死刑判決を受けた元少年=上告中=の実名を掲載したルポルタージュ(出版・インシデンツ)が7日、一部の大型書店で販売された。少年法は、本人の実名などを出版物で明かすことを禁じているが、本には、通った学校名や中学卒業時の顔写真なども掲載されている。

 「名前や顔が出ないことでモンスターのようなイメージがふくらみ、それが死刑を望む世論を形成している」。著者の増田美智子氏(28)は、実名にした理由を、本の中でそう記している。

 インターネット新聞を退職後、事件についての雑誌記事を読み、元少年に手紙を書いたことがきっかけとなった。取材を続けたのは「(元少年を)殺して何になる」という問いへの答えが欲しかったからだと書いている。

 ただ、そうした思いとは別に、本は、元少年や関係者との会話や手紙のやりとりを、延々と引用した記述が多い。

 ノンフィクション作家の佐野眞一氏は「面会などを通じて被告の言葉を得るのはイロハのイ。それをそのまま載せるのではなく、どう表現するか、だ」と語る。

 東電OL殺害事件を描いた作品では、悩んだ末に被害者の女性を実名にした。「実名を出すことは、筆者や出版社の『思想』であり、一定の説得力がなければならない。今回は、こうした問題に対して真摯(しんし)に向き合い悩んだ様子が感じられず、安易に一線を越えたとしか思えない」という。

 少年事件の被害者遺族のその後を描いた「心にナイフをしのばせて」などの著作があるフリージャーナリストの奥野修司さんも「インタビューの結果を読者に放り投げている、レベルの低い本だ。何のための実名なのか。書き手の覚悟を全く感じない。この本で少年犯罪の実名化について議論したくない」と厳しい。

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