「どんな取り調べによって『自白』させられたのか。私たち遺族も知りたい」。足利事件で再審無罪が確実な菅家利和さん(62)と弁護団に別の女児殺害事件2件(いずれも未解決)の取り調べ録音テープが5日開示され、女児の遺族は再審公判での録音テープの再生や検証の行方に重大な関心を寄せている。(足利事件取材班)
菅家さんは足利市内で起きた1979年の福島万弥ちゃん=当時(5)=殺害容疑で再逮捕、84年の長谷部有美ちゃん=同(5)=殺害容疑でも書類送検されたが、93年2月に2事件とも証拠不十分で不起訴となった。
「『自白』したのに不起訴。どうして? と当時思っていた」。万弥ちゃんの父譲さん(55)は不起訴を知った当時を振り返る。捜査関係者から結果だけ知らされたが、詳しい理由の説明はほとんどなかった。
事件の現場にはリュックサックなどの遺留品もあり、失踪前の目撃者もいた。「これまで菅家さんを犯人と思わざるを得なかったが、今も逃げている真犯人がいる。なぜ、こんなことになったのか。録音テープを聞いて、どんな捜査をしたのか知りたい」
一方、有美ちゃんの父秀夫さん(65)は開示のニュースをテレビで見て「こんなに録音テープがあるのか」と驚いた。しかし「時効がないなら再捜査してもらいたいが、もうそっとしておいてほしい」と複雑な胸中ものぞかせた。
菅家さんはこの日、宇都宮地検検事正の謝罪を受けた。譲さんは「冤罪に苦しんだのは気の毒」としながら「足利の一連の事件で遺族は蚊帳の外にいるような気がする」と未解決となっている事件にやり切れなさをにじませた