きょうの社説 2009年10月8日

◎米粉の普及拡大 石川でも給食に使えないか
 米粉の生産振興に向け、石川県のコメ農家やJA、食品業者らが設立する協議会に期待 したいのは、一にも二にも販売ルートを広げ、県民が米粉製品に触れる機会を増やすことだ。金沢市でも米粉を使ったパンの直販店がオープンし、しっとり、もっちりした味わいが人気である。ぱさつきの少ない食感は高齢者向きとも言われており、パンが苦手な人にも受けるのではないか。

 政府は農家の戸別所得補償制度の実施に向け、主食以外の米粉用や飼育米用への転作を 奨励する見通しだが、一般消費者が米粉製品を購入できる場所がまだまだ少ない。米粉パンやケーキ、パスタなどを多くの消費に食べてもらって、ファンを増やしてほしい。

 富山市は、学校給食で週2回のパン食のうち、年9回分を米粉パンに切り替え、さらに すべてのパンを米粉パンに切り替えることも検討している。米粉パンにすると、普通のパンよりも1食当たり19円高くなるが、子どものころから米粉パンになじんでもらい、長期的な視点で県産米の消費拡大につなげる狙いである。石川県でもぜひ参考にしたいアイデアだ。

 米心石川(金沢市)が、同市内で始めた米粉パンの直売店は全国のJA組織でも初めて 、原料となるコメの買い入れ、製粉、加工、販売までを一貫して行っている。石川県産米粉を100%使用し、焼きたてを提供していることもあり、「おいしい」と買い物客に人気だ。米粉の需要を喚起し、コメの消費拡大につなげるアンテナショップの位置付けだが、こうした店を着実に増やしていきたい。

 小麦の国際価格が昨年上半期より下がっていることもあり、米粉パンはやや割高になる が、米粉に向いた品種の選定や栽培法、製粉技術の改良が進めば、コスト的にも十分太刀打ちできるだろう。食料自給率を高め、地産地消を推進するばかりでなく、稲作農家の収入を増やし、耕作放棄地を減らす効果も期待できる。

 県内ではパンに限らず、米粉を使ったケーキやめん類の商品開発も進んでおり、安全・ 安心な新しい地元食材として、消費拡大の機は熟している。

◎地方分権3次勧告 義務付けの見直し優先を
 政府の地方分権改革推進委員会が第3次勧告で、国が法令で地方自治体の仕事を縛る「 義務付け」の廃止・縮小や、国と地方の協議の場の法制化などを求めた。これらは「地域主権の確立」という民主党の政権公約と方向性が一致しており、優先的に実現してもらいたい。

 義務付けの廃止は、各省庁の規制権限を奪うことになるだけに官僚機構の抵抗は根強く 、分権委の事前調査で省庁が自主的に見直しに応じた項目は、全体のわずか3%に過ぎなかった。「官僚主導」から「政治主導」への転換を旗印とする鳩山政権にとって、義務付けの見直しはまさに政治主導の実践力の試金石となる。

 義務付けは、全国一律のサービス水準の確保などを名目にしているが、地域の実情に応 じた自治体独自の行政運営や事業展開の妨げになり、自由度の拡大を望む地方にとって弊害の方が目立つ。法令の所管省庁が補助金配分により財政面からも自治体を束縛しているとの指摘もあり、地方側は見直しを強く求めている。

 具体的な見直し対象として、例えば、屋外の遊び場面積や調理室の整備など事細かく規 制した保育所の設置基準や、生活道路の歩道幅の規制などが挙げられる。安全性の確保に配慮しながら、これらの規制が緩和されれば、それぞれの地域事情に合わせてより迅速、効率的に施設整備やサービス提供を行うことできる。事業費の節減にもつながるため、自治体の切実な課題である財政健全化にも大いに資することになろう。

 分権委は今後、税財源に関する第4次勧告を年内にも予定している。ただ、鳩山内閣の 中では、安倍政権の時に設置された現在の分権委を廃止し、新たな組織を作ることも検討されているという。

 分権委が昨年末の第2次勧告で提言した国の出先機関の統廃合案は、出先機関の「原則 廃止」をうたう民主党公約とは必ずしも一致しないなど、分権改革の道筋がなお見えにくくなった面もある。鳩山政権による分権改革のレールをしっかり敷き、実行のスピードアップを図ってもらいたい。