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きょうのコラム「時鐘」 2009年10月8日
緊迫の朝を迎えた。台風18号の襲来である。上陸は2年ぶり。憎らしいことに、列島をなめるように北上している
台風には目がある。雲の渦巻きの中心に、ぽっかりと雲のない部分ができる。いつのころだったか、北陸が台風の目に入ったときの光景が忘れられない。激しい雨と風が、うそのようにやんだ。近所の人たちが家から姿を見せ、突然現れた青空をポカンと見上げた 訳知り顔の大人が「いまに台風が退治できる」と話した。台風の目の中に飛行機を飛ばす。機内には雨雲を消すクスリがどっさり積んである。台風と一緒に進みながらクスリをばらまき続け、やがて雨雲を消してしまうのだという 夢のような話が実現しそうに思えたほど、台風の目は穏やかだった。が、程なく、吹き返しの強風と激しい雨が襲ってきた。いったん青空を見せておいて、また暴風雨で苦しめる。台風は、ときに悪ふざけまでしているようにも思え、怖さと憎らしさが増した 台風退治の夢は持ち続けたいが、厄介な目まで備える難敵である。雨風が弱まったところで、油断はできない。気の許せない長い一日になる。 |