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裁判員裁判 弁護活動に“地域格差” 移動に負担、人員不足… 被告人に不利益も

10月2日7時57分配信 産経新聞

 福島地裁郡山支部で9月28日から始まった東北で2件目の裁判員裁判で、裁判員を選ぶ選任手続きへの候補者出席率が約77%と過去最低となった。被告が暴力団組員であるという背景のほか、訪れた候補者が「裁判所まで車で片道2時間かかる」とこぼしたように、地方ならではの交通事情も出席率低下の一因となったとみられる。こうした“地域格差”は弁護活動にも影を落とし、裁判員裁判で被告人の不利益につながりかねないが、地方での弁護士の充実に向けた動きはまだまだ鈍い。(大泉晋之助)

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 地域格差はこれまでの裁判員裁判でも浮かび上がった。「被告人との接見は週に1回程度が限界」。青森地裁で9月2〜4日に開かれた裁判員裁判で、被告の主任弁護人は振り返った。

 被告が勾留(こうりゅう)されていたのは、青森県警十和田署。本来なら青森地裁八戸支部の管轄だが、同県内の裁判員裁判は青森地裁だけで開かれるという事情が影響した。このため主任弁護人は、十和田市−青森市間の往復140キロを行き来することを余儀なくされた。この主任弁護人は「冬には雪などで交通事情はもっと悪くなる。接見や打ち合わせの回数はもっと減る」と指摘する。

 こうした事情は被告人の不利益となりかねない。

 刑事裁判は、検察側の主張に対して弁護側が反論していく構図のため、弁護側が不利になりがちだ。弁護士が少ない地方では一人が抱える仕事は多い上、被告と接する機会が減れば、法廷で展開する主張の完成度は下がる。

 一方の検察官は、弁護士と違って県内各地に散らばっているわけではなく、同じ庁舎内にいて、担当検察官同士で頻繁に意見交換できるため、「検察側と弁護側の主張の差が広がる」と口にする弁護士もいる。

 しかし、地方での弁護士充実の動きは鈍い。

 日本司法支援センター(法テラス)や日本弁護士連合会は、「態勢は整っている」と、裁判員制度開始を前に強調してきた。

 法テラスは制度開始前、弁護士過疎地域に事務所を開き、スタッフ弁護士を派遣した。スタッフ弁護士の主な業務は国選弁護。ただ、法テラスは地方事務所に、スタッフ弁護士のさらなる確保を求めているが、なかなか集まっていない。

 国選弁護を担う契約を法テラスと結んでいる弁護士は、弁護士全体の58%の1万5556人(今年4月1日現在)に上るが、都市部に集中している。ある刑事弁護士は「地域の弁護士の事情で、被告が不利益を被る不平等があってはならない」と主張するが、解決の道筋はついていない。

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 ■10万人あたりの弁護士数

 (1)東京  94・94人

 (2)大阪  36・93人

 (3)京都  16・16人

 (4)愛知  15・79人

 (5)福岡  14・89人

       …

(40)福島   5・56人

       …

(43)秋田   5・35人

(44)三重   5・12人

(45)岩手   5・06人

(46)茨城   4・58人

(47)青森   4・55人

  全国平均   19・6人

 ※平成20年弁護士白書より

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最終更新:10月2日8時27分

産経新聞

 

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