安倍晋三・官房長官が自民党総裁に選ばれたら、幹事長は二階俊博・経産相――。永田町で最近、こんな見方がささやかれだしている。総裁選の重要争点になるであろう中国との外交姿勢で、安倍氏が自他ともに認める強硬派なのに対し、二階氏は親中派でも突出した存在で、「媚中派」との批判もあるほど。到底、折り合えるはずもないが、どうしてこんな話が出てくるのか?
誰が首相になろうとも次の政権は、財政再建と経済成長の両立▽アジア外交の正常化▽統一地方選と参院選の大敗阻止に取り組まなければならない。実は、これら三つの課題で最も実力を発揮できる政治家が、二階氏なのだという。
特に関係者の注意を引いたのは、財政・経済一体改革での台頭ぶり。これは与謝野馨・経済財政担当相の下で、六月までに次期政権で実行する方針が決められるが、影のキーマンとして二階氏が急浮上したからだ。
もともと消費税や経済成長率をめぐり、中川秀直・自民党政調会長と対立していた与謝野氏が「助っ人」として引き入れたのだが、二階氏は「経済成長戦略大綱は自分の所で作ろう」と、中川氏が狙っていた目立ちそうな仕事をちゃっかり自分の担当にしてしまった。安倍氏は「小泉改革で拡大した格差を固定させない」として「再チャレンジ政策」を政権構想の柱に据えるが、実効性を伴うものにするには財政再建・経済成長の裏付けが欠かせない。二階氏は、その一つを早手回しに握ったことになる。
問題の対中外交だが、正常化は安倍政権になっても避けて通れない。むしろ強硬派の「安倍政権」だからこそ、与党の要職に強力な親中派を据えれば外交の布陣として幅が広がる。「表で安倍氏が強く出て世論を引き付け、裏で二階氏が中国をなだめる。中国相手にはそれくらいの役割分担がないと。二階氏ならその芸当ができる」(日中関係者)。
肝心の選挙対策は、次の幹事長が小沢一郎・民主党代表と戦う参謀役であることを考えれば、小沢側近として手の内を知り尽くしている二階氏は打ってつけだ。もっとも仮に親中派の福田康夫・元官房長官が首相でも、これら三つの課題をこなす敵役として二階氏の名が挙がるだろう。
「要は安倍と福田のどちらに転んでもいい。政界再編を生き抜いてきただけあって、さすがに抜け目ない」(自民党幹部)というわけか。