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【鞆の浦】景観保護が不可欠な時代に
このニュースのトピックス:汚染・環境破壊
歴史的価値のある港町の景観を残すため、湾の埋め立てを差し止めた1日の広島地裁判決は、事業を進めるうえで景観の保護への配慮が必要不可欠な時代が到来したことを強く印象づけた。平成18年に言い渡された高層マンション訴訟の上告審判決で最高裁が示した「景観利益」が認められ、司法が大型公共事業を止めたという事実は重い。
アニメ映画「崖の上のポニョ」の舞台ともされる「鞆(とも)の浦」の自然の景観や、歴史的景観、都市景観を貴重なもの、保護すべきものとする考え方は近年急速に高まり、社会に定着しつつある。同様に歴史的景観の保護と開発の是非が争われた和歌浦景観訴訟で、平成6年に和歌山地裁が住民側全面敗訴の判決を言い渡したときとは状況が一変し、全国の自治体が次々に景観条例を制定。17年には景観を「国民共通の財産」と位置付け、各条例に法的根拠を与える景観法が施行された。
しかし、騒音や大気汚染など具体的なデータで事業の影響を評価できる「環境」とは異なり、景観の価値を客観的に判断する指標や手法はその後も未成熟で、どの景観が法的保護に値するか、という判断は容易ではない。
景観利益と、事業がもたらす利便性などのメリットとのバランスを適切に保つ役割は、本来裁判所ではなく、住民との距離が近い地元自治体にこそ期待されるものだ。環境と同様に景観への影響を計画段階から精査し、住民とこまやかに対話を重ねながら事業の妥当性を慎重に検討する姿勢が、今後さらに強く求められると言える。
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