憂楽帳

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憂楽帳:街の質感

 歩いていて、この街いいなあと思うことがある。古くからの美しい町並みだったり、小ぎれいに暮らそうとする人々の品が見えたり、油にまみれた町工場街の確かな息づかいもいい。そこにいる安堵(あんど)と、敬意のような気持ちがわいてくる。

 先日、東京・銀座で食事した。ゆっくりこの街を楽しんだのは初めてだろう。二十数年前の学生時代、銀座は立ち入りがたかった。新宿の夜がギラギラした裸電球なら、銀座はステンドグラスの向こうに見えるような。年月が私に貫禄を与えたのか、感じ入っていたら、一緒にいた作家さんが「銀座もチラシを配るようになったんですね」。夜の蝶(ちょう)が辻々(つじつじ)で通行人に笑みを投げていた。不況が街のとっつきをよくしていたのか。それでもまばゆかった。

 さて、名古屋。暮らして通算15年という第二の故郷のつもりで言わせてもらうと、やはり何か足りない。「若者文化がない」「夜が早い」「実利に走りすぎ」など、さまざまに指摘され久しい。来年、開府400年。街の質感をじっくり考えたい。【松本正】

毎日新聞 2009年9月19日 中部夕刊

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