阪神・金本知憲外野手(41)が6日、今季限りで現役を引退する広島・緒方孝市外野手(40)への惜別の思いを語った。広島時代は同い年、同じ外野手として良きライバルだった緒方に常に一目置いてきた金本。きょう7日が、お互いユニホーム姿では最後の試合となる。この日は甲子園での全体練習に参加後、夜の便で広島入り。また、4位ヤクルトが横浜に勝ち、3位阪神とのゲーム差は0・5に縮まったが、真弓明信監督(56)は残り3戦全勝を誓った。
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緒方との思い出を聞かれた金本は「そうやな…」としばらく視線を宙にめぐらせた。広島に在籍した11年、同じ外野手としてしのぎを削った同級生が今季限りでユニホームを脱ぐ。大卒と高卒。FAで広島を離れた金本と、残った緒方。歩んだ歴史は違えど、互いがどこか心の片隅に特別な意識を携えてきた。
「ライバルという感覚はなかったけど、同い年だからな…。とにかく、あいつは本当に練習をよくやってたよ。仙人みたいなやつだったから」。ともに出場100試合を超えた95年から主軸として広島カープを支え、大選手への階段を上った。ドラフト“外れ”4位から並外れた練習量でのし上がった金本をして、「仙人」と言わしめる緒方のストイックさは計り知れない。
緒方の生まれ持った肉体の強さは、鉄人のそれをも凌駕(りょうが)していたという。「あるスポーツ番組で一緒になったとき、身体能力のすごさを目の前で見せつけられて、すごいやつだなと思った」。同い年でレギュラーを競ったスーパーマン緒方の存在は、金本を超一流へ引き上げる原動力になっていたのかもしれない。
7日の今季カード最終戦が、金本と緒方のラストマッチとなる。「花束贈呈?ビジターだからないと思うよ」。たとえ阪神側から特別な計らいがなくとも、金本は試合前に緒方のもとへ出向き、ねぎらいの言葉を掛けるつもりだ。
ただ、もちろん勝利を贈るわけにはいかない。CS進出の芽が消えた広島との最終戦は、絶対に落とせない一戦になる。最近4試合で打率・353、6打点と好調気配の主砲が、新球場になってまだ一発のない広島で緒方への惜別アーチをかければ、CS出場へ勢いがつくというものだ。
「(緒方は)まだレギュラーじゃないころから、足と守備は一級品だった。バッティングがなかなかうまくいってなかったけど、何かをつかんでからは、すごくよくなった。1つのことに集中して入っていく姿は、今の選手にはなかなか見られないところ」。阪神の若手にも緒方のような追求心は見習って欲しい。プライベートで深い付き合いがなくとも、野球人として敬意を抱く選手がまた1人、バットを置く。
立浪和義、江藤智、そして緒方孝市。同世代が体力の限界を感じ、グラウンドを去っていく。特別な感慨を抱きつつ、阪神の4番金本知憲は新たなステージへ歩を進める。