韓国経済研究院(韓国に於いて日本経済団体連合会の役割・活動を担っている団体)に大学時代の同級生が勤務しています。名前は尹星駿で経済教育課上級調査員をしています。先月、ソウルで開催された韓国国家祈祷朝餐会に出席した折に久しぶりに再会しました。
尹星駿氏と色んな話をしているうちに、韓国の国会議員秘書に日本の経済事情を勉強して貰うミッションの派遣を考えており、その訪問先等の選定・手配について相談を受けました。そうした話し合いの集大成が、3泊4日の「日本産業視察ミッション」としてまとまりました。
5月27日、尹星駿氏は上司の金・常務理事と一緒に、韓国の国会議員秘書25名を引率して愛知県にやって来ました。最初の訪問先は「明治村」で、日本が門戸を世界に開いて欧米の文物と制度を取り入れ、同化して近代日本の基盤を築いた時代の貴重な建築物を見学しました。
5月28日の朝、三種の神器の一つ草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)が祀られている2千年にわたる篤い信仰の歴史を物語る熱田神宮を参拝しました。
名古屋城の説明を受けている韓国経済研究院企画の
「日本産業視察ミッション」の一行
その後の名古屋城の見学・散策から私も同行しました。元気な愛知県を象徴する荘厳な名古屋城をバックに、トヨタ自動車を中心する愛知県の企業群の
高い成長力について説明しました。トヨタ元町工場までのバス内で、尹星駿氏との大学時代の失敗エピソードを披露して、皆さんから爆笑を受けました。
ミッ
ションに同行して来られた韓国経済研究院常務理事の金氏はトヨタの工場見学に人一倍関心を持っている様子で、中日新聞の記者に、韓国国会議員秘書日本産業
視察団の目的について問われると、「今最も熱い愛知県とそこの代表的な会社であるトヨタを勉強するため」と返事をされていました。
トヨタ
自動車の車作りの現場を見るために訪問した元町工場では、最新のプレス、ボデー、組立といった生産ラインを見学できました。元町工場は1959年8月に操
業を開始したそうで、約4,000人の従業員が、クラウン、ブレビス、プログレ、マークIIなどの高級車や、プリウス、エスティマハイブリッドなどの「環
境にやさしい」車を、1ヶ月当たり約13,000台製造しているとのことです。元町工場はとても大きく、総面積は東京ドームのおよそ35倍の大きさ(1,
600,000m2)とのことでした。年間、約30万人の方が見学に訪れるそうです。
朝6時20分から翌朝の1時まで連続2交替制で働いている組立ラインを見学する箇所に着くと、韓国の秘書の方々は、従業員がキビキビとして、内側部品、エンジン・足回り部品、バンパーなどの外観部品を組み立てていく様子を、身を乗り出して観察しておりました。
工
場見学後の懇談時の挨拶の中で、トヨタ自動車豪亜中近東業務部企画室本部統括グループ主幹の小原直樹氏がトヨタは品質の限りなき改善を求めると言われたの
が強く印象に残っています。「トヨタは2015年に世界で25%のシェア(市場占有率)を目指すと言っていますが、それは夢であって目標ではありません。
何故なら、トヨタの目標はより良い品質の車を提供することです」と言われました。
質疑応答の時間になり、沢山の方々が挙手しましたが、最
初に指名された方は、トヨタの円滑な労使関係が確立されたプロセスに関して質問をしました。韓国では労使の問題が一番で、どのようにして日本のように円滑
な労使関係を築くかが大きな課題になっているようです。それゆえに、日本企業を代表するトヨタがどのようにして今日の円満な労使関係を築いてきたのかに大
きな関心があり、その過程での双方の取り組み方について質問されました。
企業PR部海外グループ長の梅木大豪氏は「1950年に大きな労
働争議があり、倒産間近まで行きました。会社を倒産させては、労使の共倒れになる。共倒れではなく、双方が譲りえるとこは譲り、共生を目指すということで
大きな合意がありました。その結果、その後は会社運営に関する全てについて、労使がとことん話し合い、会社を伸ばし、従業員の雇用と福祉を伸ばしてきまし
た。」と回答されました。
賃金についての質問もありました。「現代自動車の組み立て工場で働いている48歳の男性従業員は、年棒1000万円くらいですが、トヨタはそれ以上でしょうか」という質問でした。トヨタの従業員はそれよりも少ないと聞いて驚いていました。
世界で有名になっている“必要な物を、必要な時に、必要なだけ適切に生産”するカンバン方式についての質問もありました。「カンバン方式」をやっている中で在庫の問題、部品納入会社とは上手くやっているのかという質問でした。
梅木大豪氏は、「先ほど工場で観て頂いた通り、無駄を省きほとんど注文に応じての生産になっている。在庫率を低くしている事により部品に問題が起きた時には、部品をすぐ取り替えられます」とカンバン方式のメリットを説明されました。
部品メーカーとの関係については、「8割の部品メーカーがトヨタの周りにあり、30年、40年付き合う中で信頼関係を築いている。トヨタは、毎月、翌月の生産予定台数を部品メーカーに内示し、負担が掛からないようにしている。」と答えられました。
工場見学後の懇談の時間は30分の予定でしたが、質問が多くて、予定時間を大幅に超えてしまいました。
梅木大豪氏は、質疑応答の最後に、「韓国には、現代自動車のように素晴らしい自動車会社があります。良い競争相手でもあり、良いお手本です」と言われ、品質改善のためには、競合他社からも良い点は学ぶ姿勢を強く示されました。
「日本の車はとてもエキサイティングで大好きです。次はトヨタの車に乗りたい」と30台の秘書の方が目を輝かせ言っていました。
韓国経済研究院の「日本産業視察ミッション」の一行は、愛知県の後、東京に移り、お台場がある臨海副都心の見学、松下政経塾訪問、浅草見物、秋葉原電気街訪問、皇居と国会の見学等をされて、30日17時発の飛行機で元気に韓国に戻られました。
2007年06月26日
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