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【風を読む】論説副委員長・平山一城 「次は日本を打ち負かす」
ベルリンの壁が崩れた20年前の秋、滞在先のワシントンで旧知の米国人研究者に耳元でささやかれた。
「(米国は)東西の冷戦に勝利した。次は日本をビートする(打ち負かす)」。とても冗談にはとれず、長く耳底に残った。
冷戦後の日本はグローバル・スタンダード(世界標準)という名の米国の経済攻勢に苦しめられた。もしや、世界第2の経済大国として米国の足元に迫った日本をおとなしくさせるために仕組まれたのでは…。安全保障で「金は出すが、血は流さないフリーライダー(ただ乗り)国」と言われてもいたから、日本人が陰謀説を信じる下地はあった。
それが頭の片隅にあったので、孫崎享氏(元防衛大学校教授)の近著『日米同盟の正体』が、米国の「謀(はかりごと)」はあったと断じているのを読んで、驚いた。「米国は(グローバル・スタンダードで)、日本的な仕組み・価値体系の放棄を求めた」
米国が冷戦後の安保戦略を見直す中での対日政策で、果たして、組織的計略があったのだろうか。虚をつかれた思いだったが、それに続く記述は一層深く考えさせられた。
「(米国は)日本の官僚組織の崩壊を目指した。日本にはシンクタンクもほぼ存在せず、…官僚組織を実質的に崩壊させれば、国家レベルの政策は出てこない」。官僚を抑えれば、日本の政策決定は自由に動かせると米国はみていたというのだ。
外務官僚OB(孫崎氏)の著作と割り引いても、同盟関係の外交ですら、この厳しさであることを肝に銘じるべきだろう。「政治主導」を標榜(ひょうぼう)する民主党政権には政策の継承に十分の配慮を求めたい。老婆心ながら、中国やロシアと、従来の外交の積み上げを排除して容易に渡り合えると考えたら危険極まりない。
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