2009年10月7日0時3分
デカップリングとは、あるものと別のあるものが分離することをさす。一時消えかかっていたこの言葉が、最近、別の形で注目されるようになった。
例えば、日米など主要国の不動産価格が下落する一方で、香港やオーストラリアなどではバブル的な資産価格上昇がみられる。また、主要国の消費者物価がおおむね前年比マイナスとなり、デフレ懸念が出る一方、香港、オーストラリアのみならず、アジアの多くの国ではインフレ懸念が高まっている。
その中で、香港やアジアの国々では、日本品ブームが起こり、日本国内でのデフレをよそに、日本商品のインフレが進行している。果物や牛乳などの食料品から、化粧品、衣類など幅広い「日本製」商品の人気が沸騰している。
中国の粉ミルク中毒などから、食の安全意識が高まり、安全で、おいしい日本食が評価されている。香港のあるスーパーでは、1パック350円の北海道牛乳が飛ぶように売れている。日本からの仕入れを増やそうと、高値覚悟で交渉したところ、逆に日本側は大量仕入れなのでと、単価を下げてくれて大幅な利益を得たという。他にも、日本の甘くておいしい果物は評判がよく、日本の化粧品や衣類も、安全で信頼性の高さが人気を呼んでいる。日本の音楽を流し、日本語の包装で「日本」を強調すれば、いくらでも商売が広がるという。
日本の農家、酪農家には大きな市場がアジアにでき、過熱している。国内で売れずに廃棄するより、アジアに輸出すれば引く手あまた。政府にしても価格の補償も減反への補助もいらなくなるので、財政負担も軽くなる。要は発想の転換だ。日本ブランドは捨てたものではない。(千)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。