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2009年08月24日

伊藤 元重 東京大学大学院経済学研究科教授 経歴はこちら>>

消費税に縛られるな「増税論議」(1/4)

 衆議院議員選挙戦たけなわである。各党は選挙のためにまとめた政策案を出して自党への投票を呼びかけている。政策を前面に掲げた選挙が行われるのは好ましいことではあるが、当然、その中身は選挙対策という色彩を強く帯びることになる。

 「こうした補助金や、公共料金引き下げをします」という給付に関わる政策は大々的に打ち出されるが、「これだけの負担をお願いしなくてはいけません」という負担の部分はほとんど話題にも出てこない。

○選挙が終われば出てくる“負担増”の話

 選挙のさなかに増税策を出しても票は集まらないからだ。残念ではあるが、それが日本の投票者の民意であるのかもしれない。ただ、選挙が終わればそうはいかない。どこの党が与党になったとしても、負担と給付のバランスの整っていない政策は市場が受け入れないからだ。

 おかしな政策を政府が押し通せば、国債利回りの急騰(国債価格の暴落)が起きたり、株価が下落したりすることも想定しうる。経済政策とは、つねに市場との戦いである。聞こえのよい政策やばらまき政策は市場には通用しない。市場は冷徹に政策全体の整合性を見て、その政権の成績評価を下すからだ。

 今の日本のように、政府が巨額の債務を抱えており、景気が低迷しているような状況では、株価の下落や国債利回りの高騰は日本経済に深刻な打撃を与えることになる。新しい政府はそうした危機と日々向かい合いながら政策運営を進めていくことが求められるのだ。

 誰が考えても、最終的には日本は増税を真剣に考えなくてはいけないだろう。増税をしなくても少子高齢化が乗り切れると考えている人は、「政府の活動を最小限にすべき」と強く信じる頑固な新自由主義者か、増税をしなくてもどこからかいくらでも財源が出てくると思っている経済音痴だけだろう。国民のほとんどが、いずれは増税が必要であると覚悟しているはずだ。

  →次ページに続く(消費税は優れた税だが…)

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