2009年10月07日

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一夜限りのvipper

1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:14:15.74 ID:DYixitHA0
やあvipper諸君。
俺は今、ホテルの一室でやることなくてこれを書いてるんだけど
俺のひまつぶしに、よかったらつきあってくれなんだぜ。





4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/03(土) 03:16:01.01 ID:hdNwF5GQ0

一人でラブホで何やってんだオッサン









6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:17:02.08 ID:DYixitHA0

ある日、一通のメールが来た。
「携帯の番号変えました。」
昔ちょっといいなと思っていた人からだった。

その人とは、気まずい出来事があって以来音信不通になっていた。
というか、もともとそれほど仲が良かったわけでもなかった。
大学の授業で、1度だけ同じ発表グループになったことがあっただけだった。










7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:17:56.23 ID:DYixitHA0

彼女は都会育ちで、色白で整った顔をしてて、落ち着いた雰囲気があった。
髪は黒髪で、首ぐらいの長さにしてた。簡素な感じ。
目鼻立ちは、デビュー時の小向美奈子に似てる。

その頃、一度だけ彼女を大学の最寄駅まで送った事があった。
彼女は実家から通っていると言ったので、送り狼は駅の入り口でまたねと言った。
彼女は俺の一つ下の学年だったので、礼儀正しく挨拶をして階段を下りて行った。










8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:18:59.59 ID:DYixitHA0

その授業が終わると、彼女との接点は他にあるわけじゃなかった。
次の年、俺は図書館でソファに座っている彼女を見つけた。
俺は彼女に合図をして、一緒に図書館を出た。

木陰のベンチに並んで座って、ぱらぱらと人が行きかう中庭を眺めながら、
俺たちはぽつぽつと世間話をした。
何を話したかもう覚えてなけど、一つだけ覚えてる事がある。










9 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:19:55.36 ID:DYixitHA0

俺は多分、彼女は落ち着きのあるしっかりした人だと思う、
とでも言ったのだろう。彼女は言った。
私、見た目からよくそう言われますけど、本当はそんなしっかりした人じゃないですよ。

その意味が俺はよく分からなかったが
(そして未だにあんまりわからないのだけど)
多分、それは買いかぶりです、という謙遜だと受け取っといた。










10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:20:35.39 ID:DYixitHA0

そのときもまたそれだけでそれっきり。
次に彼女と話したのは卒業間近になってからで、
どういう経緯でだったか忘れたけど、とにかく俺はまた彼女と話をした。

ちなみに、俺が彼女を見かけるとき、彼女はいつも一人だった。
それが俺に声をかける勇気を与えてくれた。
女の子同士で数人いたりすると、その時点で俺は諦めてしまうからな。










11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/03(土) 03:20:36.11 ID:ZvS4OP6aO

めでたし めでたし









13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:22:16.86 ID:DYixitHA0

その時彼女と何の話をしたのか忘れたけど、
久しぶりのやりとりの中で
今度どこかに遊びに行こうという約束をうまいこと取り付けた。

ありていに言えばデートということなので、俺は歓喜した。
カレンダーがぱらりぱらりとめくられて、
心待ちにしていたその日は来た。









14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/03(土) 03:22:54.45 ID:j9WylOe+O

ふむ









15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:23:23.70 ID:DYixitHA0

俺たちは、大学の正門で待ち合わせていた。
彼女は時間に遅れた。
2、30分ほど経っても彼女は現れなかったので、俺は彼女に電話をかけた。

気まずい出来事が起きたのは、その電話で話したときだった。
信じがたいほど下らない失敗を俺はやらかした。
きっとあがっていたせいに違いないと思うのだが。










16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:24:35.46 ID:DYixitHA0

俺は事情があって、当時一緒なグループで作業していたメンバーの間で
共有していた電話番号の一覧を手にして、彼女に電話をかけていた。
電話で彼女と話している間、俺はその名簿をぼんやりと眺めていた。

彼女は結局その日は都合が悪いということで、デートはドタキャンとなった。
残念だったが、きっと次があるだろうと思っていた。
その後に彼女から送られてきたメールを読むまでは。

>>14
聞いてくれて、ありがとう。









17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:25:32.77 ID:DYixitHA0

そのメールにはこうあった。
私はXXじゃありません。多分私のことを誰かと勘違いしているんじゃないですか。
それではさようなら。

俺は事態を理解した。
そういえば電話中、彼女に全然別の苗字で呼びかけていたような気がする。
意味なく眺めていた名簿にあった、別の女性の苗字で。










18 :つき ◆Lunar//n5Y :2009/10/03(土) 03:26:31.84 ID:TZJmTjjI0
なるほど。
アナグラムか。









19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:26:39.93 ID:DYixitHA0

何故こんな下らない失敗をしたのか、今考えても本当に不思議だが、
要はあがっていたのだと思う。俺はすぐ平謝りのメールを送った。
彼女からの返信はなかった。

とにかくごめんのメールを何通か送った。
そしたら、もういいの、謝っているに返信しなかった私も悪かったと彼女は書いてきた。
それっきり、デートもへったくれもなくなって、俺は大学を卒業して他の土地へ移った。










20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:28:18.67 ID:DYixitHA0

別天地で新生活が始まって1年が過ぎ、俺には妻となるべき人もでき、同棲をはじめた
仕事やらなにやらに追われ、名前を間違えた彼女のことはすっかり忘れていた。
そんなある日、そのメールは来た。

「携帯の番号変えました。」
唐突に、その彼女からメールが来た。とても事務的な文面だった。
それは多分CCだからなのだろうけど、まだおこっているのかもしれないとも思った。









21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:29:39.20 ID:DYixitHA0

ひさしぶり、と俺は返信した。
たまたま、俺はそのとき少し先に出張の予定があった。
出先は、彼女のいる土地だった。

いついつにそっちに行く用事があるんだけど、メシでもどう、とダメ元で誘ってみた。
そしたら、意外にも彼女はいいですよと応じてくれた。
俺は心躍らせながら彼女のいる土地へと向かった。










22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:30:59.59 ID:DYixitHA0

ここでちょっと話に割り込むけど、
そのとき俺は妻となるべき人と一緒に生活していたので、
他の女性を食事に誘うのは裏切り行為だと思うよ。不快だったら謝っとく。すまん。

大学を出てから初めて彼女に会ったその時の印象を、俺は余り詳しく覚えていない。
忘れるものだな、人ってのは。
薄情だから忘れるんじゃない。でも、だからこそ余計に残念だな。










23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:32:14.37 ID:DYixitHA0

とにかく俺が覚えているのは、俺が彼女を誘ったレストランのこと。
俺がかつて住んでたところの近くに、安いけどそれらしい店があるのを知っていた。
おしゃれに縁のない俺の精一杯の努力として、その店に予約を取った。

久しぶりに彼女に会って、俺の気持ちは弾んでいた。
彼女はあんまり変ってなかった、と思う。きれいだったのは間違いない。
話したり笑ったりしながら、俺たちはビルの25階に入っているそのお店に向かった。










24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:33:10.47 ID:DYixitHA0

俺たちは席に案内された。
幸運なことに、その日は晴れていて空気もきれいだったので、
夜景はいつにもまして美しかった。お天気の神様ありがとう。

俺自身、久しぶりにその店に来られて、少し懐かしいような、ほっとした感じになれた。
しかしそれ以上に、彼女がその店や夜景をとても気に入った様子だったのが嬉しかった。
そして何を食ったのか忘れてしまったが、とにかく食べつついろんな話をした。










25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/03(土) 03:34:18.55 ID:KdOoU5MV0

忘れすぎだけどおもしろい









27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:35:53.01 ID:DYixitHA0

彼女は留年していた。これは会う前にやりとりしたメールにも少し書いてあった。
原因は、彼女がいうところの「ちゃんとしてない」ということなのかもしれない。
きっと引きこもっていたのだろうと思う。

彼女は、このごろはろくに異性とメシ食ったりもしないと言った。
だからこんなちゃんとした食事に誘ってくれて、嬉しかった、と言ってくれた。
俺は名前を間違えたことを何度も謝って、その後はそれをネタにして笑いあった。

>>25
ありがとう。
一度全部ワードに書いたもので、貼り付けくそめんどくせえ。









28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:40:00.84 ID:DYixitHA0

そんな楽しい時間は閉店時間とともに終わり、
それじゃまた、といって、俺たちはそれぞれの帰路へついた。
それぞれの生活へ、しかしちょっとだけ変化の種を持って。

ごく自然に、俺は彼女とメールのやり取りをするようになった。
1日1通とか、2通とか。
はじめの頃はそんなもんだったと思う。

>>26
コテハン怖いよう










29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:41:06.39 ID:DYixitHA0

俺は仕事柄、頻繁に彼女のいる土地へ出張があった。
そして今思えば、その年はやたらそこへの出張が多かったような気がする。
俺は彼女にメールを打ち、待ち合わせ、メシを食った。彼女は食べるのが好きだった。

時々、彼女からのメールが来て、
今合コンに出てるんだけどなんだこりゃひどいみたいに書いてある事があった。
全く意外だが、よい相手がなかなか見つからないらしい。










30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:42:33.09 ID:DYixitHA0

そこで俺は友人を紹介した。
エキセントリックだけど、人にはないものを持ち合わせたレアな人。
あと俺よりイケメン。

俺は出張の時はよくその友人の家に泊めてもらった。
ある時期以降、それは完全に常態化するのだけど。
それは浮いた宿泊費を小遣いにするためだった。










31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:43:12.76 ID:DYixitHA0

二人に了解をとって、お互いのメールアドレスを教える。
そしてその二人はしばらくして会ったらしいのだが、
ほどなく二人から別々に連絡が来た。

どうやら、男のエキセントリックなところが裏目に出たらしくて
最後は彼女が呆れて帰ってしまったらしかった。
女はせっかく紹介してくれたのにごめんと言い、男はやっちまったけどしょうがねえやと言っていた。










32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:44:02.12 ID:DYixitHA0

仲人役が失敗したその後も彼女のいる土地への出張ラッシュは続き、
その都度、俺は彼女に会い、メシを食った。
そして俺もだんだん彼女についての理解を深めた。

彼女は地味で品のよいデザインを好んだ。それは彼女に年齢不相応に落ち着いた印象を与えた。
そしてインテリ志向で、知性が行動原理のうちに自然に数えられている類稀な女性だった。
そしてよく見れば見るほどきれいな顔をしていて、おっぱいも結構あった。










33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:44:51.48 ID:DYixitHA0

メシがてら、俺と彼女とはいろんなところをほっつき歩いた。
どこをどう歩くかとかはあまり重要じゃなかった。
たいていは彼女が適当に決めて、それで待ち合わせてぶらぶらし、メシを食った。

俺も彼女も酒は全然飲まないのだけど、その分よく食った。
俺は甘いものも大好きなので、その点は彼女と嗜好が会った。
歩き、話し、笑い、メシを食ってケーキを食った。









35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:45:32.44 ID:DYixitHA0

俺と彼女との関係は、現実的には曖昧な、微妙なバランスの中に成り立っていた。
世間的には、俺のやってることは浮気と同じだ。俺は罪悪感を少し感じた。
一方で、俺は体のこととなるとおくてなので、その辺の抑制は我ながら安心だった。

彼女と会うことは、俺の人生で本当に特別なことだった。
こんないい女と二人きりでこころゆくまで話して、笑って、食って、
こんな幸運な事があるだろうかと思った。










36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:46:17.48 ID:DYixitHA0

よく晴れた初秋の日。
俺はまた彼女と待ち合わせた。
またぶらぶらしてメシを食って、別れるときに俺は言った。明日も会える?

俺は三日間の滞在の予定だった。初日に彼女に会ったけど、また次の日も会いたかった。
しかし、彼女に断られるのが怖かった。その時、彼女に断られる以上怖いことはなかった。
しかし彼女はいいよと言ってくれた。俺は救われた思いだった。










37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:46:57.59 ID:DYixitHA0

そして滞在二日目、どこをどう歩いて何を食ったかはあまり思い出せないけど、
彼女と二人での楽しい時間はまた過ぎ去り、昨日より少しだけど確実に辛くなった帰る時間がきた。
死ぬかと思うような緊張感の中で、俺は尋ねた。明日も会える?

実際、馬鹿げた話だと思う。そんなに毎日毎日ベタベタ遊んであるくなんて、おかしいでしょ?
俺たちは何だ、コイビトかよ、と。それは絶対に口にしてはいけないと頭のどこかで理解していた。
俺と彼女の関係を説明するとしたら、すぐに否定されなければおかしい何かでしかありえない、と。










38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:47:55.31 ID:DYixitHA0

俺はとにかく恐れていた。彼女が鳥のように突然俺の前から飛び去って行くことを恐れていた。
今の関係を暗黙に更新する事が姑息なだけだとわかっていても、
そうした甘えを彼女に許してほしかった。知的で美しくて誇り高い彼女に。

電車のホームで俺が超びびりながら明日も会えるか尋ねたとき、彼女は即答した。
いいよ。それじゃいつどこにしよっか?俺は安堵しつつ、次の日の予定を決めた。
帰りの電車の中、彼女は突然口数が少なくなり、ムッとしたようだった。










39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:49:15.07 ID:DYixitHA0

最後の日、俺は彼女と待ち合わせた。
昨日ちょっと怒ってたようだったけど、どうやらそれは杞憂のようだった。
食いすぎて、下痢だったのかもしれない。

この日だったか、前の日だったか定かじゃないけど、
彼女はいつもとちょっと違った化粧をしてきた。
もともとの目鼻立ちがいいから、とにかく冗談じゃなくかわいいぞおいと思った。










40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:50:34.63 ID:DYixitHA0

うろうろぶらぶらしたあと、
海の見える公園のようなところのベンチに適当に座った。
特に誰もいなかったので、俺はベンチに寝そべって、その格好で彼女と話をした。
俺がひどい冗談ばかり言うので、彼女は笑って俺の頭を軽くはたいた。
彼女には似つかわしくない所作だった。しかし親密な感じがして、嬉しかった。
思えば、それが俺と彼女の体が触れた最初で最後だった。










41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:51:42.32 ID:DYixitHA0

下らない冗談(ほぼ全部下ネタだったと思うけど)も尽きると、俺と彼女は黙った。
空が青く、海から涼しい風が吹いて、静かな午後だった。
俺も彼女も、しばらく何も話さなかった。ただ目を開けて、一緒に目の前の景色を眺めていた。

夕方、でかい観覧車に乗った。
あのぶらぶらする小部屋に二人で乗り込んだ。
ドアが閉まり、俺と彼女を収容した小部屋はどんどん高くに上がって行った。










42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:53:13.53 ID:DYixitHA0

夕方になると、帰る時間が近いので、俺は少し憂鬱だった。
この観覧車も、頂点までは登り続けるけど、頂点を越えたらもう降りるだけだ。
降りたら降りたで、帰らないといけない。

小部屋の中には向かい合わせにベンチがあり、俺と彼女は向かい合わせに座った。
結構大きな小部屋で、二人だけだとかなり余裕があった。
足を広げて体重をぐらぐらかけて揺すると、小部屋は揺れた。










43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:54:03.02 ID:DYixitHA0

そうやって揺らして遊んでいるうちに、
ゆれるゆれるとか言いながら、
彼女は俺の側にひょいと飛び込んできた。

その時確かに小部屋は揺れたのだけれど、
そんなことに多少なりとも本気で気を取られていた(怖いという意味ではなくて)
俺は、今から考えればやはりアホだったと思う。










44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:54:54.91 ID:DYixitHA0

俺は、その時彼女を抱きしめるべきだった。
今から考えれば、後先のこととか、そういう心配は中途半端で愚かなことだった。
思えば、彼女が俺に触ったりすぐそばに来たりしたのは、彼女からのサインだったのだろう。

頂点を過ぎた観覧車はその後も容赦なく回り続け、とうとう俺と彼女の二人は地上へ降りた。
そしてメシを食って、電車に乗った。
帰りの電車で、彼女は昨日の3倍ほどムッとしているようで、この時は見るからに不機嫌だった。










45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:55:44.63 ID:DYixitHA0

俺は彼女の不機嫌に恐れをなして、何が悪かったのかいろいろ考えたけど、
全然わからなかった。
そして俺は帰ってからメールで何があったのか聞いた。悪いことをしたのだったら謝りたい、と。

そしたら、何とも歯切れの悪いメールがきた。
明らかにいつもと違う調子で、とにかく気にするなと書いてあった。
俺はしつこく尋ねた。君のせいで、俺もひどく落ち込んでいる。本当のことを教えてくれと。










46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:56:37.85 ID:DYixitHA0

そして、終わりは嵐のように突然やってきた。
彼女は次のメールで、こう書いていた。
あなたが好き。だから離れたくなかったの。態度が悪くて本当に申しわけなかった、と。

彼女のメールに、俺は衝撃を受けた。
そして、あんなに恐ろしくむっつりしていた彼女にいとおしさを感じた。
しかし、この喜びの絶頂は、あの観覧車のように、あとは下りがあるだけだった。










47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/03(土) 03:56:37.22 ID:j9WylOe+O

女心なんて分からん。
女々しい俺にも意味分からん。









48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 03:57:49.03 ID:DYixitHA0

好きと言われてしまった以上、俺はそれをうやむやにすることはできない。
衝撃もまだ生々しいさなかに、俺は、妻となる予定の女か、彼女かの二者択一を考えた。
ここが人生の分岐点だなと、こればかりははっきり意識できた。

はっきりいって、当時同棲していた女を捨てて観覧車の彼女を選ぶのは
選択としてはあまりにも鬼畜過ぎて、人間としてあり得ないレベルだった。
それでも、真剣にそれを実行するべきかと思い悩んだ。

>>47
女心な、初めて本物の女心に触れた気がしたよ。









49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 04:01:17.94 ID:DYixitHA0

しかし、結局俺は義理に反することはできない、すべきでないと思った。
断腸の思いで、観覧車の彼女に、君とは付き合えないと書いた。
メールを送信すると空虚感に苛まれ、膝や胸から力がとめどなく流れ出るような気がした。

こうして彼女との関係は、彼女の決定的な一言によって
怒濤のように終局まで推し進められ、そのことがほかならぬ当人たちによって明言された。
俺は涙も出なかった。空虚。空虚。空虚。胸の辺りの虚ろさがひどかった。

やべえ、なんか40秒未満に投稿しようと繰り返してたら規制食らわすっていわれたよママン。









50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 04:02:59.44 ID:DYixitHA0

ここで話は現在に戻る。
俺は今ホテルの一室に泊まっていて、窓からは観覧車が見える。
何年か前に、俺と彼女が乗り込んで揺らした観覧車だ。

俺はこの土地に来るたびに彼女のことを思い出し、
何ともいえない気持ちになる。
なんとかして、これに自分なりに整理がつけられないものかと。










51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 04:04:42.89 ID:DYixitHA0

そして、悲しいけれど、すでにたくさんの記憶が失われているらしく
今回これを書いていて、必死で思い出そうとしたけど
もうだめなものがいっぱいあるとわかった。

だから、あの観覧車が見える部屋で暇をもてあましているこの時にと思って、
必死でいろいろ思い出して、9時間ぶっ続けで書いた(ちょっと夜更かしし過ぎた)。
こうやって書くことで、何とか整理が付くかもしれないと思って。










52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 04:05:56.14 ID:DYixitHA0

そうしたら、やっぱりちょっとは整理できた気がする。
しかしそれより嬉しいのは、当時の彼女についての記憶をたくさん掘り起こせたこと。
きっと多くを忘れてしまっているだろうけど、それでも俺が当初思ってたよりはいろいろ思い出せたよ。

後日談だが、今俺は、当時妻になる予定だった女性と結婚し、子供もできた。
この女性には、ことの一部始終を話した。
俺の浮気沙汰を泣いて悲しんだが、最後には受け入れてくれた。頭が上がりません。










53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします[sage]:2009/10/03(土) 04:07:10.06 ID:DYixitHA0

観覧車の彼女は、その後エキセントリックな友人にもう一度会ってみると言って
自分から連絡を取って、その後いきなり馬があったらしく、
あれよあれよと言う間に結婚し子供が生まれた。イケメンだからだろうか。

観覧車の彼女がエキセントリックな友人のアパートに通っている時期に、
その友人宅に何度か泊めてもらったが
床に落ちている陰毛をみて、複雑な気持ちになったものだよ。










54 :さよなら ◆4d0XtL8/RY [sage]:2009/10/03(土) 04:10:05.21 ID:DYixitHA0

さてVipper諸君、ここまで読んでくれてありがとう。
観覧車の見えるこの部屋で書いて、この部屋から書きこむことに意義があると思って。
観覧車の彼女はかなりネラーの気があるから(さすが推定引きこもり経験者)、
このスレが彼女の目に触れないように頼む。明日からまたROMるよ。じゃあな。
うわーもう4時だ、寝よ。










55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/03(土) 04:12:01.15 ID:j9WylOe+O

面白かった。





56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/03(土) 04:14:35.98 ID:dlRUgB/b0

全部見た。1おつ





57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/10/03(土) 04:16:31.76 ID:KdOoU5MV0

おつ










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この記事へのコメント

1.     2009年10月07日 00:30 ID:vNZF7paiO
読みやすい文章だな
2. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 00:31 ID:CbyPxcr70
なんか・・・空虚感が残るね
なんか秋らしいなw
3. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 00:54 ID:mU08PeNB0
小説読んでるみたいだった
>>1文才あるね
4.    2009年10月07日 01:17 ID:v2BR2aVyO
秋の夜長にふさわしいスレやね
5. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 01:25 ID:FQzgmmXf0
せつねぇな…

もう秋か。
6. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 01:40 ID:qe.E883c0
切ないなあ。恋愛小説みたいだ。
距離感がたまらん。

彼女がこれ読んで思い出してくれたらいいなあ。
7.    2009年10月07日 01:50 ID:jORrtM73O
>>1は読書家っぽいね
いい文章
8. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 01:56 ID:D3ZtOkWZ0
読みやすいよう心がけていることが伝わってくるような文章だった。
9. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 02:01 ID:JIHy6aff0
>>1は春樹ファンだと思う
10. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 02:17 ID:rWCfKrr50
やはり軒並み評価高いな、文章。
久々に読みやすいスレだ。

しかし、誠実な>>1だなあ……。
ぐらっとするあたりが人間的で共感できるし、義理を通すのも理解できる。
今は地に足をつけた立派な男のようだし。
文章力込みでこんな男になりたいなあ。
11.    2009年10月07日 02:19 ID:0gKh.GKUO
小説のように読みやすい。
12. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 03:06 ID:ltzBe6QK0
なにも大きなハプニングがないところがリアル

普通の大人の恋ってこんな感じだよ

特に何もない


外涼しいなあ。月がきれいだよ
13. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 03:26 ID:3zKh8nvh0
ちゃんと奥さんに話す辺り>>1は素直な性格なんだね。
14. 初めてです   2009年10月07日 04:11 ID:BXPuClDQO
なんかすごい分かる。
キツいとも違うし、懐かしいだけでもない。微妙な感覚。
15.     2009年10月07日 07:57 ID:jCJYeXUTO
現在から過去の思い出を振り返りまた現在に戻り締めるって流れスゴい好きだ
16.    2009年10月07日 07:58 ID:kirL3nUBO
凄くいいね
ただ自分語りだから死ねばいいと思うけど
17.    2009年10月07日 07:59 ID:h0KpMI6dO
読みやすかった。
18. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 08:15 ID:FuHiWBnS0
なんか、すごく物寂しい、秋って感じのする名文だったよ
>>1の切なさが伝わってくる
19. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 10:07 ID:RxVfn3ow0
なんか知らんが泣いた
20. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 10:41 ID:H1Wyh91nO
短編小説みたいだな
>俺と彼女の関係を説明するとしたら、すぐに否定されなければおかしい何かでしかありえない、と。
ここの文章が洗練されているようで好きだわ
この>>1にはまたなにか書いてほしいな
21. ななし   2009年10月07日 10:49 ID:abp2GXkVO
切ない話だが嫁さんが気の毒だな…
彼女と会ったことはまあいいとしても
それを嫁さんに話すなんてちょっと無神経過ぎるだろ
結局>1は話すことで自分が罪悪感から解放されたかっただけ
何でもかんでも話せばいいってもんじゃない
墓の中まで持ってくのも優しさだろ
22. 以下、VIPにかわりましてヴィブロがお送りします   2009年10月07日 11:01 ID:g6jV1VNY0
で?何でVIPでやんの?
23.    2009年10月07日 11:41 ID:kCJRl5XF0
美談にしようとしてるけどただの浮気した屑男の話じゃん
24.    2009年10月07日 11:58 ID:PRPnvk5EO
読みやすかった。読ませる文章ってゆうか。
>>1の浮気話なのに、不思議と否定的な気持ちが沸かなかった。

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