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きょうの社説 2009年10月7日
◎追加雇用対策 即効性ある景気刺激策も必要
北陸の雇用情勢が一段と厳しさを増し、有効求人倍率は石川県、富山県ともに0・5倍
を下回る超低空飛行が続いている。求職者2人に対し、求人数が1以下しかない状況は、過去の景気後退期にも例がない。日銀の「北陸短観」などでは、企業の景況感は改善の兆しがあるとはいえ、雇用環境は完全失業率5・5%の数字以上に悪いと見るべきだろう。石川労働局と富山労働局によると、石川県の有効求人数は25カ月連続の減少、富山県 も同じく27カ月連続のマイナスである。雇用統計は遅行指標とはいえ、まだ底が見えない。特に若年労働者の失業率が高く、来春卒業予定の高校生の内定率が大きく落ち込んでいるのも気掛かりだ。 政府は、失業率のさらなる悪化を懸念して追加雇用対策を実施するという。短期的対策 として年度内にも職業訓練の充実や雇用調整助成金の要件緩和などを行う考えだが、雇用対策だけでは限界があるのではないか。景気の下ブレを食い止めるための即効性のある景気刺激策を同時に実施していく必要がある。 鳩山政権はこれまでに各省庁からの削減額で2兆5000億円程度の財源を確保し、目 標とする3兆円に向けてさらに積み増しを図る考えだ。だが、景気浮揚の効果が薄い事業を見直すのは当然としても、予算を組み替えるまでにタイムラグが生じ、特に地方経済に悪影響を及ぼす懸念がある。削ることが目的化して、景気の失速を招かぬよう十分配慮してほしい。 8月の完全失業率は、過去最悪だった7月の5・7%から0・2ポイント改善した。し かし、これは見掛けの数字であり、雇用調整助成金によって、200万人もの雇用が維持されている。こうした「企業内失業者」は内閣府の推計で608万人に上るとみられる。 民主党のマニフェスト(政権公約)には、子ども手当や高速道路料金の無料化など、家 計への直接的な支援が盛り込まれている。実現すれば、個人消費を刺激し、内需拡大に役立つだろうが、即効性という点では弱い。景気が息切れしてくるようなら、第2次補正を組む必要も出てこよう。
◎中朝会談 「6カ国」復帰にはまだ遠い
北朝鮮の金正日総書記と中国の温家宝首相の会談は、両国の変わらぬ関係の深さは伝わ
ってきても、焦点となっていた北朝鮮の6カ国協議復帰の道筋を描くには至らず、両者の思惑が一致して終わったように見える。北朝鮮が米朝協議の成果を多国間協議の前提と位置づけたことで、今後は米朝協議の行 方に焦点が移り、6カ国協議復帰の道のりはむしろ不透明感が増すことが考えられる。鳩山由紀夫首相は9日に日韓首脳会談、10日には日中韓首脳会談に臨むが、北朝鮮ペースで交渉が進まぬよう各国の枠組み強化を促す必要がある。 金総書記は朝鮮半島非核化をめざし努力することには「変わりはない」としたうえで、 米朝協議の結果をみて6カ国協議を含む多国間の会談を行う用意があるとの立場を示した。温首相はこの発言を評価したが、協議再開の見通しが立ったわけではなく、日本として評価するのはまだ早い。 北朝鮮は国連安保理のミサイル発射非難の議長声明に反発し、4月に6カ国協議離脱を 表明した。今回は「6カ国」という名称に言及して復帰の可能性をにおわせたものの、応じる用意のある多国間の枠組みは「米中朝」という見方もあり、金総書記の発言はあいまいさを残したままである。 中国首相の北朝鮮訪問は18年ぶりである。北朝鮮としては6カ国協議議長である中国 の顔を立て、中国を引き寄せることで国際的な孤立を防ぎ、米朝協議に向けた環境整備を狙ったのだろう。中国にしても経済援助のカードを切って踏み込んだ発言を引き出し、最低限のメンツは保てたかたちだ。 9月の国連安保理は全会一致で「核なき世界」決議を採択し、各国に北朝鮮とイランに 対する制裁決議の着実な履行を呼びかけた。国際社会が結束して北朝鮮包囲網を強めることを確認した矢先だけに、今回の会談は北朝鮮を対話プロセスに引き込む狙いがあるとしても、中国が「救いの手」を差し延べたという印象もぬぐえない。北朝鮮が核廃棄をしないまま、見返りを得るという展開だけは何としても避けねばならない。
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