きょうのコラム「時鐘」 2009年10月7日

 日本の次期主力戦闘機(FX)と目されるF35の性能に関する情報提供料として、米政府が10億円を要求しているとのニュースがあった

兵器購入の記事は珍しくないが、これは変わったニュースである。1機90億円のF35を何機買うかまだ不明だが、本体とは別に機密費が請求されるのである。共同開発の英豪などに開発費を配分する必要があるからという

レーダーに捕捉されにくいステルス性能は購入後に提供される。日本は「足元を見られている」との声もあるが、逆に米の足元が見えないか。最新鋭機が米単独で開発できない現実が浮き彫りになる

中国で軍事パレードがあった。過去に比べて戦車が減りミサイルが増えたという。旧ソ連と対立していた時代の主力は戦車だったが、中ロ戦争の心配が消えて減ったと解説されている

こうなると、21世紀世界の仮想敵は国でなく「時代」のように思えてくる。兵器生産は今も「矛盾」の故事に似て、時代の変化に勝つための新型の「矛(ほこ)」や「盾(たて)」が自己増殖する。不要不急の予算削減に悩む時代に億単位の請求書が届く。これほどの矛盾もなかろう。