日本人の2人に1人はがんになり、3人に1人はがんで亡くなる。がんは身近な病だが、孤独だったがん患者や家族たちが励まし合って、医療行政に要求する市民運動も広がっている。
一方で世界で使われている抗がん剤がなかなか承認されず、患者に届かない状態もある。この「ドラッグ・ラグ」で日本は最初の発売国から平均4年遅れている。抗がん剤で治療を受けている患者が世界の標準的な薬を使えないのは、深刻な悩みといえる。
この問題を考える講演会が患者団体の企画で兵庫県で開かれた。がん患者で医師の小倉恒子さんは20年を超える自らの闘病体験から、抗がん剤肯定者になった。「抗がん剤が効かなくなったら、次、次と別の薬を使えばよい。それには薬がいっぱいあることが必要だ。がん患者は待てない。遅れを何とか短くしたい」と訴えた。
がん患者は命がけで、わらをもつかむ思いが強い。標準治療から外れたがん難民たちの足元を見るように、効果が不確かで高額な医療関連ビジネスも横行する。
小倉さんは「いい先生を見つけるのは大変。悪い先生ほどホームページに何回も登場してアピールがうまい傾向にある。最後まで値段が出ていないのは怪しい」と指摘した。
もっとも薬は副作用への注意が欠かせない。承認後も副作用を監視し、薬害を抑える姿勢は必要だ。それでも日本の4年のドラッグ・ラグは長過ぎる。医学の進歩を待望する患者の願いに応えるため、製薬会社と厚生労働省の責任は大きい。