軽い！薄い！曲げられる！
ロームがフレキシブル有機ELデバイスを開発、照明デザインの新たな可能性を提案

ローム株式会社（本社：京都市）はこのほど、次世代の照明デバイスとして期待されている「フレキシブルEL照明」の開発に成功しました。このデバイスは従来の有機ＥＬ（*1）の8分の1の軽さ、6分の1の薄さで、かつ曲げることができる光源であり、光を必要とするあらゆるシーンで、新たなデザイン・表現を可能とする発光デバイスです。具体的には一般照明、航空機や列車内の照明、ディスプレイなどの分野において、デザイン性を重視したハイエンド製品への搭載を想定しております。
また超薄板ガラス、ガスバリア層による封止を行ったことで高い信頼性を実現するとともに、巻き取り可能なフレキシブル基板を採用したため、量産性の高い生産方式であるロール・ツー・ロールプロセス（*2）での製造が可能であり、有機EL照明の広い普及に貢献できるものと考えております。
なお、本成果は10月6日から開催されるCEATEC JAPAN 2009(幕張メッセ)にてデモ機による展示を行う予定です。

有機EL技術はすでにディスプレイ分野で実用化されていますが、近年その技術の進展は目覚しく、輝度、寿命の向上から照明デバイスへの転用が注目されはじめています。有機ELの最大の特徴は面発光光源であり、これによりLEDなどの点光源と異なる光の表現・演出が可能になります。また、太陽光に近い自然な色合いが出せることや、紫外線を含まないため被照明物の退色がない、虫が寄り付かないといった特徴を備えるほか、将来的には蛍光灯を凌ぐ高効率が実現できると言われており、省エネルギー志向に合致した理想的な光源です。加えて、有機ELは原理的にフレキシブル化することが可能であり、そのための研究開発も盛んに行われています。しかしながら、有機ＥＬ素子は酸素や水分により急速に劣化することから、素子の封止には高いガスバリア性（10-6g/m²day）が求められます。通常、プラスティック基板上に有機ELを形成した場合、不十分なガスバリア性のために、その寿命は非常に短いものとなってしまいます。したがって、従来から有機ELではガラス同士の貼り合せによって封止を行ってきました。
今回ロームでは、超薄板ガラス（厚さ0.05mm）とガスバリア層によって有機ELを挟み込む構造（図1参照）にすることで、柔軟性（曲げ半径25mm）を維持しながらも、高いガスバリア性を確保することに成功、プラスティック基板をベースにしながらも、十分なガスバリア性を確保し、フレキシブル有機EL照明の開発に成功しました。（基板供給に関して日本電気硝子株式会社が協力）　また、ベースがプラスティック基板であることから、非常に軽量（0.05g/cm²）で、落下に対する安全性や耐衝撃性にも優れております。

ロームでは2008年5月に有機EL照明の事業性を検証する会社であるLumiotec社（本社：山形県米沢市）に出資するなど、有機EL照明の普及に向けた取り組みを進めています。またローム本社におきましても、有機EL照明の特徴を活かした高付加価値デバイスの研究開発に力を入れています。

今回の成果はフレキシブル有機EL照明の実用化に向けた大きな一歩であり、今後はさらなる封止技術の向上やデバイスの大面積化、ロール・ツー・ロールでの量産技術の開発等に取り組んでいきたいと考えております。

■ロームが開発したフレキシブル有機ＥＬデバイスの特徴

1. 非常に軽い　　　　0.05g/cm²（従来の有機ELの1/8）
2. 非常に薄い　　　　0.3mm（従来の有機ELの1/6）
3. フレキシブル　　　半径25mmの曲げが可能
4. 高い信頼性　　　　超薄板ガラス、ガスバリア層による封止で信頼性に優れる

■用語解説

■ フレキシブル有機ELの構造図

■ 今回試作したフレキシブル有機EL発光デバイスの応用例