まさに動くサンドバッグだった。前進するが、ほとんど手は出ずに王者の重量感あるパンチを浴び続けた。ジャッジの1人が引き分け。最大2ポイント差しか開かなかったが、点差以上に完敗の印象は強い。大毅は判定負けのコールをぼうぜんとした表情で聞くと、歓喜の王者を背に、足早に控室に引き揚げた。
「前回の世界戦から成長した姿を見てほしい」と言い続けてきた。ガードを固めて突進し、左フックを振り回すだけの単調なスタイルから最近はジャブを駆使するなど戦法に広がりはみられた。ただし、再起後の5試合はピークを過ぎた下の階級の元世界王者ら実力不明の外国選手ばかりで、日本や東洋太平洋の王座を取ったわけではない。世界の頂点に立てるほどの厳しい修羅場を経験し、たくましさが身に着いたかは疑問だ。
「左フックだけじゃなく、右も勉強してきた。スムーズにジャブも出るようになった」との言葉通り、序盤はフットワークを見せる場面もあったが、劣勢になると以前の単調な戦法に終始した。ボディーブローを浴び続け、真っ赤に腫れ上がったわき腹が痛々しい。残念ながら、耐久力しか世界レベルを見せられなかった。
亀田大毅
「悔しいな。おれがいかれんかった。判定について言うことはない。結局、勝負は勝たなあかん。試合を見てくれたファンにはありがとうと言いたい」
デンカオセーン
「相手には若さがあったが、自分は経験を生かして12ラウンドを戦った。判定は公平だった。経験が勝ちにつながった。次の防衛戦も日本で戦いたい」
星野敬太郎氏(元世界ミニマム級王者)
「攻めていたのは大毅君の方。成長を感じられた。王者は中盤から大きなパンチを交えてきた。派手なパンチでポイントが加算されたと思う」
六車卓也氏(元世界バンタム級王者)
「もったいなかった。勝つチャンスはあった。互角以上の試合をしていた。チャンピオンの老かいさにやられた形だ」