高齢者の交流の場にもなっているおおいた土曜市=9月12日
「安い、新鮮、楽しい」のキャッチフレーズで親しまれてきた「おおいた土曜市」。2002年10月から毎月第2土曜日に大分市の遊歩公園で開かれ、中心市街地のにぎわいを創出してきた。しかし、交通量の増加が見込まれることや出店数の減少などから来年3月末での終了が決まり、まちなかの”名物行事”の一つが消える。関係者は今後、市街地の新たな魅力づくりを模索することになる。
交通事故の懸念
9月12日の土曜市の会場。まんじゅう、干物、野菜…。約40店舗が遊歩公園内に並ぶ。午前10時の開始と同時に梅干しを購入した主婦(82)は「顔見知りやから安心して買えるんよ」と店員とも親しげ。別の主婦(78)は「朝の運動代わりになるし、必ず寄るんよ」とショッピングカートに野菜や花を入れていた。
高齢者の交流の場にもなっている土曜市は、会場が車道に挟まれていることもあって、当初から交通事故の懸念が持たれていた。「毎回6人の警備員を横断歩道に配置し、現在まで交通事故ゼロを維持してきた」(大分商工会議所地域振興課)。しかし、7月から春日陸橋の撤去工事が始まり、来年度には国道10号バイパスの大道陸橋の撤去工事も控えている。
土曜市の運営協議会は「遊歩公園の通りは迂回(うかい)路となり、交通量の増加が予測されることから、現在地での継続を断念した」と説明する。6月の運営協議会で中止が決まった背景にはこのほか、出店者の減少や商店街への波及効果が少なかったこともあるという。
高知市追手筋の朝市を参考に、土曜市を引っ張ってきた野田文彦運営協議会長は毎回、会場に出向いて出店者一人一人に声を掛けて来た。「何とか中心市街地で後継となるイベントができないか協議しているが、どこも余裕はなさそうだ」と表情はさえない。
無添加の梅干しを販売している中村梅園(中津市本耶馬渓町)の中村雄大(たけひろ)さん(32)は、「土曜市への出店を契機に、都町などの飲食店オーナーから注文が来るようになった。PRには最適の場所だったのに」と残念がる。
全体の調整必要
中心市街地では、大分まちなか倶楽部(矢野利幸社長)が昨年秋から若草公園で、毎月第3土曜日に「まちなか市場」を開催。今月3日から中央通りで、毎月第1土曜日にオープンカフェ企画・歩行者楽園「ほこパラ」が始まった。歩道にテーブルといすを配置し、食事をしながらくつろげる空間を演出している。
大分市の市街地活性化に詳しい姫野由香大分大学工学部助教は「現在の中心市街地は交通や居住などを絡めた活性化の全体像がうまく形成されていない」と分析。その上で「魅力ある場所を生み出すためにイベントは有効だが、街の“体力”が落ちている今、あれもこれもは難しい。全体を調整する中で、継続性の見込める質の高いイベントを戦略的に仕掛けていくことが大切」と話す。
郊外に大型店が増える中、まちなかに人を呼び戻すのは容易ではない。 (経済部・大塚史穂)
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