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【主張】中国建国60周年 開かれた大国へ民主化を
中国は1日、建国60周年を迎えた。中国は、いまや経済・軍事大国として国際社会での存在感を増し、金融危機克服などで世界の期待は大きいのだが、政治や軍事は透明性を欠き不信感も根強い。中国が国際社会との協調を進めるには国内の民主化と政治改革をし、開かれた大国になることこそ必要ではないか。
この60年は、毛沢東時代の「政治第一」の前半と、トウ小平氏が率いた「経済第一」の後半で二分される。今日の経済発展が、1970年代末以来の改革・開放の成果であることは言うまでもない。
過去30年間に中国の経済規模は60倍を超え、ドイツを抜いて世界3位になった。経済発展に伴い、軍事力の増強も著しい。国防予算は89年以来21年連続で2ケタ成長を続け、未公表分を含めると米国に次ぐ規模とされる。
中国は、こうした国力増強を「特色ある社会主義」の成果と誇示している。共産党独裁の政治体制下で資本主義の市場原理と手法を取り入れたことを指す。私有経済の振興を促す一方で、国家が経済・金融を管理する計画経済時代の手法で、世界金融危機の影響も最小限に食い止め、景気対策でも、世界に先行、一党独裁の優越性を示した。
その半面、国内では問題と矛盾が山積している。格差の拡大、官僚の腐敗などへの国民の不満はしばしば暴動に発展する。チベットやウイグルの騒乱事件も続く。胡錦濤政権は9月中旬の党中央委員会総会(4中総会)で国民の党不信に危機感を示したが、有効な具体策は打ち出せなかった。
中国が直面しているのは、国際化、多元化した社会で国民の権利意識が高まり、権力エリートが支配する政治体制へ批判の矛先を向けだしたことだ。そうした批判は80年代に盛んに行われ、民主化運動を導いたが、89年の天安門事件以後は民主化や政治改革論議はタブーになってしまった。
1日の建国60周年の演説で、胡錦濤国家主席は、中華振興の夢を実現した共産党の指導を誇る見通しという。4中総会は、一党独裁制堅持を強調したが、既にネットを含め情報統制を強化、異議申し立てを抑圧する傾向が顕著だ。
それによって共産党が国民の信頼を回復することもなく、国際社会の対中警戒心も消えないだろう。中国が、政治改革に着手する必要はますます強まっている。