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一杯のちゃんぽんに野菜480g、外食チェーン初の野菜国産化計画とは?

nikkei TRENDYnet10月 6日(火) 10時49分配信 / 経済 - 産業
一杯のちゃんぽんに野菜480g、外食チェーン初の野菜国産化計画とは?
リンガーハットは10月1日から、グループ全店で用いる野菜をすべて国産野菜に切り替えることを宣言した。消費者が食に抱く安全・安心志向の高まりが、外食チェーンのメニューを変えようとしているのだ。
 リンガーハットは10月1日から、グループ全店で用いる野菜をすべて国産野菜に切り替えることを宣言した。消費者が食に抱く安全・安心志向の高まりが、外食チェーンのメニューを変えようとしているのだ。これまでにも契約農家で生産した野菜を使う外食チェーンはあったが、「グループ全店でぎょうざの具に至るまですべての野菜を国産化。外食チェーンでは初の取り組みとなる」(リンガーハット・米浜和英会長兼社長)。

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 発案のきっかけは、米浜会長兼社長が日本フードサービス協会で会長を務めていた時に実施した産地見学会で、産地で食べる野菜のおいしさを強く認識したことだった。安定的に同じ食材を大量確保しなければならない外食チェーンは、輸入ものの冷凍カット野菜に頼らざるをえないのが実情。だが消費者の安全・安心志向が高まっていたこともあり、米浜氏が2008年9月に社長に復帰した際、「日本の新鮮な野菜を使おう」と社内に呼びかけ計画が動き出した。

全国を回り調達先を確保

 当然ながら実現は困難で、購買担当者は全国を駆けずり回ることになった。同社のちゃんぽんに使われる野菜は、キャベツ、もやし、たまねぎ、にんじん、長ねぎ、コーン、オランダさやえんどうの7種類。このうち、キャベツともやし以外の5種類の野菜を、これまでは海外で調達していたからだ。例えば、ちゃんぽんに入れるオランダさやえんどうはリンガーハットでは年間220トンが必要だが、国内の年間生産量は50トンしかなかった。そこで、以前から付き合いのある生産者に交渉して必要量を生産してもらうことになった。

 「天候不順の影響でオランダさやえんどうは10月1日に間に合わず当初は代替の国産野菜を使うことになったが、冷凍野菜ではなく新鮮な野菜を使うことにこだわる以上やむをえない。お客さんには理解してもらえるはず」(リンガーハット・米浜会長兼社長)。安全性もさることながら、冷凍のカット野菜とフレッシュな野菜では、しゃきしゃきした味わい、おいしさが格段に違う。「コーンだけは収穫時期の関係等で難しいが、ほかの野菜はすべてフレッシュなものをそのまま使う」(リンガーハットジャパン・鎌田武紀社長)方針だ。

毎日16万人の口に新鮮な国産野菜を

 そもそも最近、野菜食を売りにする飲食店が増える傾向はあったのだが、全国チェーン店が全店で全野菜を国産化するインパクトは大きい。「リンガーハットで食事する人は1日に13万人。グループのとんかつ浜勝では1日に3万人」(リンガーハット・米? 会長兼社長)。その全店が野菜を国産化することで、毎日16万人が恩恵を受けることになるのだ。

 輸入野菜を国産野菜に切り替えると同時に、味付けも変えることになった。どんな味に変わったのか、早速、試食してみた。食べたのは新メニューの「野菜たっぷりちゃんぽん」650円。その名の通り大量の野菜が盛り付けられた、国産野菜をアピールした新メニューだ。キャベツ200g、もやし200g、たまねぎ50g、にんじん10g、長ねぎ10g、コーン5g、オランダさやえんどう5gと、全部で480gの野菜入り。出てきたちゃんぽんには、こんもりと炒めた野菜が盛り付けられている。見た瞬間は、「全部は食べられない」と感じたほどだ。

しゃきしゃき噛める炒め野菜

 野菜は大切りで噛み応えがある。量が多いので、食べ続けると疲れるほどだ。だが、それも冷凍のカット野菜ではなく、収穫した野菜をそのまま工場に搬入し人の手でカットしているからこそ。それだけ新鮮な野菜を食べられるわけだからありがたい。

 野菜と野菜の間に埋もれるように、えび、いか、ぶた、かまぼこといった野菜以外の具材もある。野菜の量が多いだけに、魚介や肉のありがたさが増す。味は非常にさっぱりしている。多少はこってりした味を想定していたのだが、全くそんなことはない。おかげで、食後ものどは渇かなかった。「以前のちゃんぽんに比べ、塩分を10%下げている」(リンガーハットジャパン・鎌田社長)とのことだ。

 ちゃんぽん丼の横に置かれた小さな器には、黄色い油のようなものが入っている。店員からは「お好みでお入れください」と説明され、香味油のたぐいかと思って入れたのだが、これはドレッシングだった。大量の野菜をサラダに見立ててのことだろうが、私は入れないほうが食べやすかった。

 「野菜が多い分、スープの味が薄くなるので、味を補うために新開発したちゃんぽんドレッシング」(リンガーハットジャパン・鎌田社長)。材料にしょうがを使っており、そのしょうがも、「主に高知産ですべて国産」(リンガーハットジャパン・鎌田社長)だ。

480gは1日に必要な野菜量を上回る

 時間はかかったが、スープを残して具材と麺は完食。しっかりと野菜を食べた満足感があった。野菜ソムリエの王理恵さんによると、「1日に食べてほしい野菜の量は350g」。「野菜たっぷりちゃんぽん」は、それを上回る量の野菜を1食で食べられる料理となっている。

 私はこってり系のラーメンなどを食べると胃がもたれるほうだが、「野菜たっぷりちゃんぽん」は、量は多いが野菜が中心で油っこくなくさっぱりしているから、食後に胃がもたれることはなかった。スムースに消化して5時間もすると空腹を感じたほどだ。

 それでも、「野菜たっぷりちゃんぽん」は量が多すぎて食べ切れそうにないという人は、まず「長崎ちゃんぽん」を食べてみてはどうだろうか。この以前からの主力メニューも、やはり野菜国産化に合わせてリニューアルしており、野菜の量も230gから255gへと増えている。値段は以前450円から500円へと上がっているが(東日本の場合)、新鮮な野菜が不足しがちな人は、一度、試してみる価値がある。

(文/中須 譲二=日経トレンディネット)

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  • 最終更新:10月 6日(火) 10時49分
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