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実名出版差し止め申し立て 光母子殺害事件の弁護団 '09/10/6

 光市母子殺害事件の被告の元少年(28)=死刑判決を受け上告中=を実名で記したルポルタージュの単行本出版に対し、元少年の弁護団が出版差し止めを求める仮処分を広島地裁に申し立てたことが6日、分かった。申し立ては5日付。

 本は「A(実名)君を殺して何になる」。ジャーナリストで出版元インシデンツの寺沢有てらさわ・ゆう代表によると、初版は4千部。7日に印刷会社から納品後、店頭に並ぶ見通し。

 元少年の弁護団の一人は「仮処分は元少年の意思だ。実名表記は承諾していない」と話した。

 本は大学職員の増田美智子ますだ・みちこさん(28)が元少年や元同級生などを取材して執筆。寺沢さんらとともに6日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見し「本人に実名で書くと伝え、了解を得ていた。仮処分の目的は弁護団による事前の検閲。報道の自由への重大な侵害だ」と批判した。

 会見によると、9月26日に出版の動きが報道されると、弁護団から内容をチェックしたいとの連絡があった。面会の場などで断ったが、6日の報道で仮処分の申し立てを知った、としている。

 増田さんは、昨年8月から元少年と25回接見しているといい、実名で執筆した理由について「本人は幼さがあり、反省しようと真摯しんしに努力している姿もうかがえる純粋な青年。報道されている人物像と違い、その原因は匿名にあると考えた」と説明。

 今年3月に接見した際に、実名で書きたいと伝えると「書いてもらっていい」と返事があり、その経緯は取材メモに記されているという。

 少年時の事件で家裁の審判を受けたり起訴されたりした人の氏名は少年法61条により報道が禁止され、新聞、テレビなどは元少年を匿名で報じている。




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