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社説
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2009年10月1日

中国建国60周年/核心的課題は倫理基準の回復

 中国はきょうの国慶節で、建国60周年を迎える。祝賀ムードの中、中国政府は60年の「輝かしい歩み」を喧伝けんでんし、現在を飾り立てようとしている。

貧富の差と汚職が蔓延

 中国の現代史は、教条主義の呪縛と政争の軋轢で国家が極度に疲弊した前半の30年と、近代化のための改革開放路線を走った後半の30年に区分できる。

 毛沢東元国家主席がリードした前半の30年では、大躍進政策や文化大革命で数千万人もの犠牲者を出し、国家自体が煉獄れんごくに投げ込まれたような悲惨な歴史を体験した。建国の立役者である毛氏だが、国内評価は「功罪半ばする」という所以ゆえんだ。

 後半の30年は一転し、最高指導者のケ小平氏が打ち出した改革開放路線の中、中国人のプラグマチストの国民性を引き出して「世界の工場」といわれるほどの近代化に成功した。今では地方都市でさえ高層ビルが林立し、上海や北京の摩天楼群に引けをとらない。

 しかし、指導者が胸を張る近代化の成功の陰で、国家の屋台骨を揺るがす問題を解決できないままでは、国力が衰退するのは必至だ。

 まず、「新富人(ニューリッチ)」の言葉に象徴される通り、すさまじい貧富の差が出現している。「貪官汚吏たんかんおり(賄賂をむさぼる悪徳役人)」という封建時代から存在する言葉がよみがえるほど、官僚の腐敗蔓延も深刻だ。毎年、多くの腐敗幹部が莫大ばくだいな資産を携えて海外に逃亡する事件が後を絶たない。法治と民主制度に対する意識が低く、秘密主義が横行する中国で、汚職は普遍的に存在する大きな問題だ。

 汚職撲滅の運動はある。しかし、それは権力闘争の一環である場合が多い。政敵の汚職を暴露し、政治的生命を奪う。汚職撲滅を掲げることで国民の注目を集め政治的浮揚効果が期待でき、政敵の抹殺で求心力も増す結果となる。

 最近、「黒社会」と呼ばれる暴力団組織を手入れし、1500人を一斉逮捕したことから注目されている重慶市トップの薄煕来・共産党委員会書記も、政治的な思惑が絡んでいるもようだ。政治家と暴力団がなれ合いの関係となり土地開発を進めるなど、利権を貪る癒着の構造に切り込んだ快挙ではあるが、次期の中央指導部入りが狙いとの見方もある。

 倫理基準が国家レベルで定着していない国の経済は、いずれ頭打ちとなる。どれほど堅固な建築物も柱が朽ちていけば、倒壊するのは時間の問題だ。

 チベットやウイグルの民族問題や全国規模で起きるようになった暴動など、解決しなければならない課題は山積している。だが、核心的で本質的な問題は倫理基準の回復だ。

高い精神性を養育せよ

 北京師範大学の于丹教授が書いた「論語心得」が年間400万冊のベストセラーになるなど今、中国は国学ブームに沸いている。伝統文化へ回帰することで、精神的なよりどころを人々は求めようとしているのだ。こうした内的要求に応えるべく高い精神性を養育できなければ、中国共産党もソ連が崩壊したような運命を辿たどることになろう。


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