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社説:選択的夫婦別姓 導入へ具体的議論を

 婚姻時に夫婦が同姓・別姓を選択できる選択的夫婦別姓制度の導入が現実味を増してきた。千葉景子法相が、早ければ来年の通常国会で民法改正をしたいと表明したのだ。

 この問題では、法相の諮問機関である法制審議会が96年、導入を柱とする民法改正案を答申した。しかし、自民党などの保守系議員から「家族の一体感を損なう」「親子が違う姓になるのは子の福祉に反する」といった反対論が強く出され、法改正が見送られてきた経緯がある。

 02年には、別姓を選択できるケースを、娘しかいない家庭で「家名を継ぎたい」などの事情がある場合だけに限定する案も検討された。だが、そもそも選択制に反対する高市早苗衆院議員は、戸籍は従来通りのまま通称(旧姓)を公文書などに使用できるとした戸籍法の改正案をまとめてこの案に対抗した。結局、自民政権下での法改正は頓挫した。

 現行法でも「夫または妻の氏を称する」となっていて中立的ではないか、との意見もあろう。だが、現実には結婚する場合、ほとんど妻が改姓する。女性の社会進出が進む中、女性たちから制度導入を求める声が出てきたことが議論の出発点だ。

 別姓導入で、家族の絆(きずな)は弱まるのか。家庭観、人生観が絡んで、妥協点を探るのは難しい。しかし、職場では通称使用が日常化し、婚姻届を出さずに結婚生活をする事実婚も増えていると言われる。

 法改正で別姓カップルが大勢となることはないかもしれない。毎日新聞が96年に16~49歳の女性約3500人を対象に実施した世論調査では、56%の女性が制度に賛成したが、5人に4人が自らは別姓にしたくないと回答した。あくまで「選択的」であり、少数派の意思を尊重しようとの民意が調査結果からは読み取れる。その観点から考えても、制度導入には前向きの姿勢で臨むべきだ。

 実施へ向けた具体的な議論についていくつか注文がある。内閣府が06年に実施した世論調査で、選択的夫婦別姓導入について「構わない」が36・6%で、01年の調査より5・5ポイント減った。「必要ない」は5・1ポイント増の35%。なぜ最近になり賛否が拮抗(きっこう)するのか。法制審答申から13年が経過した。「家」への伝統的な価値観を尊重する立場など、改めて広く国民の声を聞いて手続きを進めてほしい。

 また、法制審要綱案では、別姓を選んだ夫婦は、届け出によって子供の姓が兄弟姉妹間で統一されるが、民主党が野党共同で国会提出してきた案(すべて廃案)では、子供によって姓が異なることもある。別姓容認派の中にも子供への悪影響を懸念する声が根強いことを踏まえ、特に慎重な議論が求められる。

毎日新聞 2009年10月6日 東京朝刊

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