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【社説】

中国建国60年 寛容な大国への歩みを

2009年10月1日

 中華人民共和国は一日に建国六十年を迎えた。「東洋の病人」といわれた中国は世界の大国に復興した。しかし、強力な指導で発展を実現した共産党が時に示す不寛容さは、将来に不安も抱かせる。

 中国の経済規模は六十年で七十七倍に膨れ上がり、今年中にも日本を上回りそうだ。一九五〇年代に一億ドル余しかなかった外貨準備は二兆ドルに達し世界一を誇る。

 先週開かれた二十カ国・地域(G20)首脳会合は主要国首脳会議(G8)をしのぐ重要な会議に位置付けられた。

 首脳の記念撮影で最前列中央に米国のオバマ大統領と中国の胡錦濤国家主席が並んだのは中国の国際的地位向上を象徴している。

 飛躍を実現したのは党の強力なリーダーシップにほかならない。建国以来三十年近くの試行錯誤と経済低迷を経て、改革・開放路線を確立した中国は大胆に市場経済を導入し成長軌道に乗った。

 「北京速度」といわれる素早い意思決定と経済建設で世界の大国に肩を並べた。発展途上国には中国をモデルに成長を目指す国々も増え、金融危機にあえぐ米欧も中国に市場として期待をかける。

 しかし、急激な成長には大きな代償も伴った。輸出振興のため外国企業に土地と労働力を格安で提供したことで、国土は荒廃し国内市場の発展は立ち遅れた。

 増え続ける貿易黒字であふれた資金は株や不動産市場に流れ込み華やかなバブルを演出する一方、貧富の差は極限まで広がった。

 故〓小平氏は社会主義の利点を効率の良さと言い切った。その教えを守り政策決定を手間取らせる民主化を排除したことで党に政治、経済の実権が集中した。

 これは政治権力を元手に巨利をむさぼる党幹部の専横や腐敗をはびこらせた。民衆は反感を強めているが、一党支配への批判はタブーで容赦ない弾圧を受ける。

 社会の亀裂が深刻化する中で指導部は時に意見が対立する外国や国内の少数派に対する「闘い」を呼び掛け、愛国心に訴え求心力を高めるのに必死だ。

 しかし、大国となった中国が示す不寛容な言動は、これまで以上に周辺国の不安をかき立てる。

 孔子は「六十にして耳順(したが)う」と修養を重ね、耳に痛い言葉も聴けるようになった心境を語った。

 大国中国に今、問われるのは内外政策で「耳順」を目指すことではないか。そのためにも党と異なる意見が政策決定に反映できる政治改革への着手が欠かせない。

※〓は登におおざとへん

 

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