2次救急医療機関はここ5年で78施設減少
需要が拡大する一方で、救急医療を担う医療機関の数は、全体としては減少しています。
2008年の3次救急(救命救急)医療機関の数は208施設で2002年より38施設増えていますが、2次救急(入院を要する救急)医療機関は3175施設で、2002年比で78施設も減っています。
2次救急医療機関の減少は、2004年の新臨床研修制度の導入をきっかけに深刻化した医師の不足・偏在(関連記事:「医師は増員すべき?」)の影響が大きいと考えられます。
意外! 救急医療が最も崩壊しているのは東京
需給のギャップの大きさは、救急現場での滞在時間や、医療機関に受け入れの照会を行った回数にも表れています。
「平成20年中の救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査の結果」を見ると、「現場に30分以上滞在した」事案は、重症以上傷病者搬送事案で1万6980人。これは、当該事案全体の4.1%に当たります。産科・周産期傷病者搬送事案では6.3%、小児傷病者搬送事案では1.8%です。また、医療機関への受け入れ照会を4回以上行った比率は、重症以上傷病者搬送事案は3.6%、産科・周産期傷病者搬送事案では4.6%、小児傷病者搬送事案では2.8%となっています。
受け入れ照会数のデータを見て驚くのは、その地域差です。照会数が突出して多いのは何と東京都で、照会数が4回以上の事案は3999件(搬送数全体の9.4%)に上ります。ちなみに2位以下は、埼玉県(1796件:同8.7%)、神奈川県(1082件:同4.1%)、千葉県(1024件:同6.2%)と続き、首都圏1都3県がトップ4を占めています。また、照会回数が21回以上の事案は全国で77件あったのですが、そのうち56件は東京都です。
首都圏で救急医療が危機に直面しているのはなぜでしょうか? 「地方に比べれば都市部は救急病院が多く、断りやすい」「都市部の方が、軽症でも安易に救急車を使う人が多い」など様々な理由が語られますが、大きな原因の1つは、人口当たりの医師数と病床数にあると考えられます。
2006年の「医師・歯科医師・薬剤師調査」を見ると、人口10万人当たりの医師数は、東京は全都道府県中で3位(265.5人)でかなり多いものの、神奈川県は41位(172.1人)、千葉県は45位(153.5人)で、埼玉県に至っては最下位(135.5人)です。ちなみに、都市別に見た場合も、さいたま市が145.2人で横浜市が170.2人。全国平均の206.3人に比べると、かなり少ないのです。
また、人口10万人当たりの一般病床数を都道府県別に見た場合、最も少ないのが埼玉県で、以下、神奈川県、千葉県と続きます(2007年「医療施設(動態)調査・病院報告」)。東京は下から10番目なのですが、ワースト3の3県からの搬送例が相応の数に上り、救急患者の受け入れに支障が出ていると考えられます。
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