インターネットの個人輸入代行で購入したやせ薬を飲んだ女性が昨年、不整脈と意識障害で服用1週間で死亡したことが、東京大法医学教室などの調査でわかった。女性が購入したタイ製やせ薬には、利尿剤や国内未承認の食欲抑制剤が入っていたという。オランダの法医学の国際誌フォレンジック・サイエンス・インターナショナル電子版(10月30日号)に掲載された。
女性は40代で東京在住。家族によると、以前からむくみがちで、医師に相談し利尿剤を飲んでいた。一方、年齢的に太りやすくなり、タイの病院が体格に合わせて出すという「ホスピタルダイエット」と呼ばれるやせ薬をインターネットで買った。だが、飲み始めて「だるい、食欲がない」と話し、8日目に自宅の居間で呼吸が減って意識が混濁。救急車で東大病院に運ばれたが、亡くなった。
司法解剖などの結果、女性は筋肉を収縮させるカリウムやナトリウムの値が異常に低く、腎臓の一部が石灰化する「偽性バーター症候群」の特徴が見られた。究明に東大病院腎臓内科の協力を得た。
研究グループは、残っていたやせ薬7種を分析。国内未承認の食欲抑制剤シブトラミンのほか、甲状腺ホルモン、女性が前から飲んでいた利尿剤フロセミドとは別の利尿剤ヒドロクロロチアジドなどを検出した。利尿剤の相互作用でカリウムやナトリウムの排出が急激に進んだ結果、電解質異常による不整脈や呼吸筋麻痺(まひ)、意識障害が誘発され、死亡したことがわかった。
「利尿剤や甲状腺ホルモンは副作用があり、やせるために飲むことは勧められない」と東大法医学教室の吉田謙一教授。世界的な医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル・ケースリポートにも5月に報告した。
「ホスピタルダイエット」は、健康被害の訴えが数年前から相次ぎ、厚生労働省がホームページで10件の被害例を示し、注意を促している。(編集委員・河原理子)