佐賀県唐津市肥前町杉野浦地区が、県管理の岸壁に係留しているプレジャーボートの所有者から、10年以上にわたって「迷惑料」名目で1隻あたり年間約1万円の現金を受け取っていたことが分かった。公共財産の無断利用といえそうな行為だが、県は現金授受について「民と民のことで、介入するつもりはない」と説明。係留についても「撤去を命じる法律がない」と話す。現状を追認するだけの県の姿勢が問われそうだ。【関谷俊介】
毎日新聞は今年に入り、約35隻が同地区にある県管理の岸壁に係留されていることを確認した。県に確かめたところ、係留場所に指定されていない岸壁だったことが分かった。県によると、県管理の岸壁にプレジャーボートを係留する場合、条例に基づき、県の許可を受けて指定港に泊めなければならない。その際、船の所有者は県に岸壁使用料を支払うこととされている。
地区関係者によると、岸壁にプレジャーボートの係留が始まったのは10年以上前とみられる。外洋の影響を受けにくいなどの理由で、福岡県内の船主らが堤防沿いに泊め始めたという。
これに伴い、地区側は「岸壁にごみが捨てられる」などとして、船主から迷惑料名目の現金を徴収するようになった。その後、船主らは海岸法に違反して岸壁にアンカーを打ち込んだ。さらにハシゴもかけたという。
10年以上前から係留している船主は「地区に金を支払っている。県から指定の港に泊めるように言われたこともない」と言う。
区長は「船主が地元の人が使う道を通って岸壁に行き、ゴミも散らかしている。迷惑料は清掃費に充てており、これからも徴収を続ける」と話している。
県農山漁村課は「指定の港に移動してほしいが命じる手段がない」としており、地区に支払われる迷惑料についても“民事不介入”の立場だ。
指定区域外の係留については、和歌山県や静岡県が条例などによる独自規制に乗り出している。和歌山県は、津波の際に係留船が民家被害を拡大させる恐れがあるなどとして、08年に条例を定めた。
毎日新聞 2009年10月5日 西部朝刊