渡邉美樹の「快答乱麻」WEB版

2009年10月6日

【29】医療サービスの向上と財政のバランスをどう見るか

Q 医療サービスの向上と財政のバランス
どのように見ていますか。
近年、医療費の患者負担が上昇、不況もあって受診を控える人もいるそうです。
地方は医師不足で、病院の閉鎖や統合が進んでいます。
個人としては医療の充実を望みますが、財政は厳しい。
後期高齢者医療制度が導入された背景にも財政問題があるのでしょう。
この問題を渡邉さんはどう考えますか。

(公務員、32歳、男性)

 確かに、医療費の患者負担増や景気の悪化で、病院に行くことを控える人がいるかもしれません。ただ、病気の程度にもよりますが、“受診控え”そのものが問題だとは私は考えていません。

 日本の医療で一番問題なのは、政策を考える人々の間に「どのようにしたらコストパフォーマンスが良くなるか」という視点がないことです。医療サービスには、国民の税金が使われています。ですから、「税金を最大限有効に使う」という視点があってしかるべきなのです。

 例として、特別養護老人ホーム(特養)を考えてみましょう。現在、特養への入所を待っている人は40万人にも上っています。こんなにたくさんの人が入所を待っており、その親族たちが介護という重労働を担っていますから、影響は100万人以上に達するでしょう。

 施設不足が恒常的になった結果、入所できるのは、地元の有力者にコネがあるような人だという話さえ耳に入ってきます。そういう人は大抵、収入も多いもの。本来は経済的に困っている人を優先して入所させるべき特養に、お金がある人が入るという矛盾が生まれているのです。

 なぜ、このようなおかしな事態になってしまうのでしょうか?それは、特養の料金が、その人の所得に関わらず誰でも同じであるためです。

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このコラムについて

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日経ビジネスアソシエで好評連載中の「渡邉美樹の快答乱麻」。仕事や職場の悩みなど読者から寄せられた質問に渡邉社長が明快に回答します。アソシエで毎号掲載している3つのQ&Aのうち1つを選んでアソシエオンラインでご紹介していきます。

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