2009年10月6日0時3分
世界同時不況は底入れし、新しい成長軌道を模索する段階に入った。急激に落ち込んだ生産の回復は心強いが、雇用はまだ悪化し続けている。今後の回復はその主軸となる個人に焦点が当たる。
しかし、少なくとも先進諸国では「物やサービス」の充足は一応ゆきわたっており、むしろ節約や生活の簡素化に関心が向いてきた。借り入れで消費を増やすことを当然としていた米国の消費態度もピューリタン的な気風を取り戻すかのような変化の兆しがある。これはマクロ的には需要の減退、輸出減となり、ミクロ的には本当に必要なもの、またぜひ入手したいと思うもの以外は切り捨てる厳しさとなりつつある。
その中でこれまでの大量生産、大量消費という行き方だけでは無駄、無理、むらが多く壁につき当たる。やはり多品種少量生産で消費者の必要にジャスト・フィットする方法への転換が課題となろう。またそのためには、消費者一人ひとりと向き合っている現場の働き手の意欲や、顧客の必要や痛みをどう受け止め、応えるかの意識の水準が問われる。それを土台とした技術や生産方式の見直しも必要だろう。働き手の意志や心遣いのきめ細かさが重視されることは、働き手の位置づけが利益獲得の手段、コストという見方から、創造的な開発の主体、利益を生む源泉という見方に変わることにもつながる。
そのような雇用観の転換は、企業経営の本来化という意味において、もっと積極的に取り組まれてよい。雇用調整助成金など、国が激変期の衝撃を緩和する政策をとっている間にこそ「何のための経営か」を問い直し、この試練の中だからこそできる転換をする必要がある。(瞬)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。