日本郵政が民営化直後、グループ5社の広告・宣伝を大手広告会社「博報堂」(本社・東京)に一括して発注する独占契約を結びながら、同社との間で覚書や合意書などの契約書類を一切取り交わしていなかったことが、朝日新聞の調べで分かった。契約額は2年間で368億円にのぼる。総務省もずさんな手続きだと問題視しており、原口一博総務相は「事実関係を調査する」としている。
日本郵政は「かんぽの宿」の売却契約に伴う入札が不透明だとして業務改善命令を受けた。同省は独占契約を採用した今回の経緯にも関心を寄せており、契約書を作成しなかった理由などについて調べる。民主党政権が公約に掲げる郵政事業の見直し作業に影響を与えそうだ。
日本郵政は07年10月の民営・分社化後、案件ごとに入札で業者を選ぶ従来の方法から、「企業イメージの統一性を図る」などとして特定の1社に限定して契約する、国内では導入例が少ない方式に変更。同年11月に企画提案コンペを開き、大手広告会社4社の中から博報堂を選定した。
その結果、朝日新聞が入手した日本郵政作成の資料によると、郵政公社時代の06年度の契約額は電通が約51億円、博報堂が約19億円、大広が約2億円などだった。民営化に伴って全体の広告量が増えた07年度は、博報堂との独占契約で約146億円、08年度は約222億円にのぼった。
日本郵政側は「包括契約に基づいてグループ各社が個別案件ごとに交わした契約関連の書類はある」とするが、元となる包括契約時には一切の契約書類を取り交わさないまま、博報堂との契約を子会社4社に義務づける運用を続けていたという。