家電量販店前に群がり、すれちがい通信を楽しむ人たち=9月、東京・秋葉原 |
すれちがい通信を楽しむ子供たち=9月、和歌山市のバナナエフエムスタジオ |
駅や家電量販店周辺に人だかりができ、各自が携帯型ゲーム機ソフト「ドラゴンクエスト」の画面を一心不乱にのぞき込む――。各地で時折見かける珍現象の理由は、同じゲームをしている人とすれ違うことでゲームで使う珍しい道具などを無線で入手できる新機能だ。現実世界での集客力を町おこしに生かそうとする動きも出ている。
金曜夕方の東京・秋葉原駅周辺。100人を超える人々が電器店前の一角にひしめく。スーツ姿の会社員、子連れの母親、リュックを背負った若者。一様に立ったまま携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」の画面を見つめる。
人々の目的はスクウェア・エニックス(スクエニ)の人気ソフト「ドラクエ9」で採用された「すれちがい通信」だ。現実の世界で近くにいるゲーム機同士が無線で結ばれ、珍しい「武器」を手に入れるための地図などを交換できる。
スクエニによると、ドラクエ9の国内出荷本数は7月の発売以来400万本を突破。50万人分のデータを集計したところ、9月までに東京都で1489万回通信があった。 こうした現象に目をつけ、地域おこしに活用する試みも現れた。和歌山市のコミュニティーラジオ局バナナエフエムは9月中旬、スタジオを「すれちがい通信」会場に。ラジオやホームページで告知したところ、DSを手に約100人の親子連れらが「やった」「きたで」と通信での地図取得を喜んだ。ラジオ局を運営するNPO法人は「地方での人集めは大変。地域活性化に役立てられる可能性がある」。
千葉県内の書店もブログでDSを持ち寄っての来店を呼びかける。スクエニは「ここまでの広がりは予測しておらずうれしい驚き。長く遊んでもらう仕掛けの一つが成功している」(広報)と話している。(溝呂木佐季)