きょうのコラム「時鐘」 2009年10月6日

 五輪招致に臨んだ石原東京都知事の「敗軍の将」の弁に、いささか複雑な思いがした。政治的な動きが歴然としてあった、という。「昔の自民党の総裁選みたいなものだ」とも

そう聞かされて思い起こすのが、札束という「実弾」が飛び交った多数派工作。競い合う2陣営から金をもらうのが「ニッカ」、3陣営なら「サントリー」、あちこちから頂いて、どこに投票したか分からなく振る舞うのが「オールドパー」と呼ばれた

まさか実弾まで飛んだわけはなかろうが、招致の舞台裏で虚々実々の駆け引きがあったことを語る知事の弁である。戦いには、正攻法もあれば、相手の裏をかく奇策もある。建前と現実とを上手に使い分けるのが、国際舞台では必要なのだろう

世界は広いし、国情もいろいろである。「ひもじさと寒さと恋を較ぶれば、恥ずかしながら、ひもじさが先」。環境保護や節約の美徳を説いても、目先のひもじさの解消に走る向きも少なからずある。良し悪しの評価とは別の、厳しい現実である

東京の招致活動費用は約150億円。世界を相手に付き合うには、随分高い「授業料」がいる。